≪第30回≫ワークステーション株式会社 代表取締役社長 末吉淳子さん

「仕事には収入以外の価値がある」 ワークステーション女性社長とのトップ対談

今回は、大阪市で創業33年となる人材派遣会社「株式会社ワークステーション」様をお訪ねして、末吉淳子社長と日本シングルマザー支援協会代表・江成のトップ対談をさせていただきました。

◆まず、基本情報としてお聞きいたします。株式会社ワークステーション様はどういったお仕事をされている企業なのでしょうか。
末吉社長:弊社はゴルフキャディ、看護師、介護士、作業療法士などに特化した総合人材ビジネス会社です。創業33年になりますが、私が社長に就任して5年目です。創業者から代わって社長が女性になったことで、きめ細かい部分などがより受け入れられるようになったのではないかと思っております。

◆33年前は、キャディさんの派遣は珍しかったのではないでしょうか?
貴社の創業当時のことなど、よろしければ教えてください。

末吉社長:最初は他のハイグレードなゴルフ場をオープンするのでキャディを集めてもらいたいと相談を受けたことが始まりです。それまでのキャディとは、普段は農作業をするおばさんが、仕事の合間にゴルフのお手伝いをするイメージでした。そのイメージを一新して、お揃いの制服を身につけ、接客と礼儀作法を習得する若くてきれいな女性がキャディをつとめる姿は社会に大きなインパクトを与えました。

「この職種は社会に必要とされる。絶対にやるべきだ!」と創業者は思ったようですが、社員は大反対。当時はバブルの時代で、デパートや銀行をはじめとする多くの企業が、高校新卒者を確保するために熾烈な戦いを繰り広げていたのです。
そこで、バスガイドの採用に長けたバス会社の方に、高校新卒者の求人募集のやりかたを教わり、九州方面を駆け回って当時60名のキャディを採用しました。新入社員教育にそれはもう教育面にも力を注ぎ、CAの接客マナーを取り入れ、華道の先生によるお花のお稽古があり、プロゴルファーにゴルフを教わり若い女性のキャディ60名がゴルフ場のオープンにずらりと並んだ姿は社会的に大反響を呼びました。

当時はゴルフの会員権が1億円にもなりました。

◆当時の反響のすごさが想像できますね。そのときとは時代がまた変わりましたが、今、女性は社会からどのように見られていると思いますか。
江成:現在は、より女性の特長が生かしやすくなったと思います。誰もが上を目指した高度経済成長が終わって、今はそれほど若い人の成長が求められていない。以前に比べれば物欲がなくなり、心を大事にする時代になったと思います。今の時代は、成長はゆっくりだけど心を届ける気遣いができる人、自己より他、社会を見られる人。そういう人が社会に必要になっていくのではないでしょうか。
政府は人材不足と言っていますが、その時代の方がむしろ女性の特性が生かせると思います。男性の心を豊かにできる、希望になる女性が求められています。

末吉社長:もう今は、バブルの頃の「24時間戦えますか」は無理ですよね。人生をバランスよく見る時代になった。

江成:出世より家族ですね。

末吉社長:バブル期と今を比べると、今の方がより女性らしさ、気遣いが求められていると思います。

江成:社会が疲弊しているからですよね。社会が優しさ、癒しを求めています。

◆女性活躍を推進するアベノミクスが5年目になりましたが、何か変わったと感じられることはありますか。
末吉社長:あまりぴんときていません。(笑)

江成:女性活躍といっても、経済社会からの男性目線で言っているだけですね。むしろ女性が働かざるを得ないという、社会の課題が浮き彫りになったと思いますよ。

末吉社長:子供の教育費がかかりますから、共働きは当たり前になっていますね。弊社でも女性は育休、産休を取って仕事に復帰し、ずっと働き続けています。でも、男性まで育休や産休を取得しているかといえば、そこまではまだ至っていません。

江成:親の介護で離職する人も増えていますね。

末吉社長:これから増えていくでしょうね。親の介護をどう考えるかは、まだまだ手探りです。時短を使ったり、いろいろ方法を模索しなくてはなりませんが、仕事と介護の両立は厳しいものです。

◆現在、キャディで働いている方はいかがですか?
末吉社長:キャディの9割が独身です。1割が家庭をもって働いていますが、家庭と両立して働く人の方が楽しんでいるように思います。家庭の安定と仕事のやりがいでバランスが取れているのではないでしょうか。キャディという仕事柄、広大で整備された場所で大きな声を出しますので、前向きな使用になるようです。仕事が終わる時間は15時頃と早いので、プライベートを充実させやすい部分もあります。

◆やはり若い女性が多く働いているのでしょうか?
末吉社長:正社員は20代前半が多いですが、派遣であれば今のところ48才がいますね。若ければいいのではなく、会話力があればよりお客様を楽しませることができます。

よく「20代は自分のことがわからない」と言いますが、確かに年齢を重ねて、主婦や母親を経験していくと、より自分の引き出しが増えていきます。

江成:多くの人が、家庭に入ると気づかないうちにコミュニケーション能力が上がっているのですよね。家族や親せきとの付き合いの中で、自然に身につくのです。なのに、自分には何もできないと思い込んでいる人が多い。

末吉社長:さらに気遣いがパワーアップしているのにもったいない。ぜひ仕事に生かしてほしいですね。キャディの若い子も、仕事を通じてお客様からたくさんのお話を聞くことで、経験値が上がっていくのです。お客様の中には経営者や役員もいらっしゃり、その方々から社会のことやご家庭のお話など、さまざまなことをお聞きします。なぜかというと、お客様と4~5時間をご一緒するのです。

◆キャディのお仕事のメリットは?
末吉社長:残りヤード数やライン、ピンまでの距離など、お客様への技術的なアドバイスはキャディがさせていただくのですが、むしろ先ほどのような生きる知恵を教えていただくことが多いです。お給料をもらって、仕事をしながら社会を学び、生きる知恵を身につけられます。

18才で入社すると、最初は当然、ゴルフのことは何もわかりません。先輩に教わって学び、翌年は後輩に教えてあげる。そうやってブラッシュアップして成長する社風です。
18才新卒で地方から出てきた子は、本当に何も知らない。ATMでお金を下ろす方法も知らないです。そういった生活面も同じ寮の先輩が見ます。風邪をひいたときの差し入れ、仕事で落ち込んだときも先輩がご飯に誘って話を聞いてあげるなど、助け合う文化が根づいています。

◆新卒で、地元を離れて寮に入る人は多いのでしょうか。
末吉社長:新卒で入社してくる子たちは、8割が地方出身ですよ。九州や沖縄地方が多いですね。感心することに実家に仕送りしている子もいます。

江成:やはり地方では仕事が少ないのでしょうか? 関西の方が給与は高いですよね。

末吉社長:地方では「地元で就職したい」という人が増えています。職種を選ばなければ仕事はあると思います。キャディの仕事を選ぶ人は、「人と関わる仕事をしたい」と思っているようです。また短時間高収入が魅力のひとつです。

◆キャディのお仕事は時間の融通がきくのでしょうか。
江成:昔はとにかく朝が早いっていうイメージでしたね。

末吉社長:そのイメージも最近は変わってきています。ゴルファーも多様化していて、早朝だけでなく、お昼からだったり、夕方からの枠を利用する方もいらっしゃいます。

江成:私も「会社を経営するならゴルフをやったら」とよく勧められるのですけど、ゴルフ愛好家が多い理由はなんでしょうか。

末吉社長:経営者にゴルフ愛好家は多いですね。ゴルフにはまってしまう理由は、グッズをそろえたりフォームを変えたり、そのたびに新しい発見があるようです。ゴルフはコースの攻略が面白いけど、思うようにいかない。18ホールの中で調子が良くてもずっとは続かない、欲が出てしまってミスしたり、性格がプレーに出るようですよ。プレーを一緒にすると、食事をするよりお互いのことがわかりあえる。そういったところが経営者に人気がある理由かもしれません。
キャディの仕事を選ぶことで、経営者の方をはじめとする視野の広いお客様から、多くのことが学べますし、人を見る目が養われます。

江成:新しい世界が広がりそうですね。シングルマザーの話を聞くと、みんな子どもを大学に行かせたいと言うのですが、仕事は収入の低い事務職を希望するんです。矛盾していることに気づいていないですよね。

末吉社長:シングルの方で子どもを大学に行かせることも可能ですよ。他ゴルフ場でお見かけしましたけれど、キャディの仕事が大好き!といって働き続けている人の中には、60~70代の方もいます。キャディは長く続けられる仕事です。

江成:それは素晴らしいですね。早く離職する人はいませんか?

末吉社長:中には「他の仕事をやってみたい」といって、アパレルや事務職など、違う道へ進む人もいますよ。でも、キャディの経験で得たコミュニケーション能力は、他のどの仕事にも活かすことができます。キャディは接客業ですからまず挨拶をしっかりすることが第一です。お客様は、お金を払ってわがままを言ってこられるので、サービス業ですからそれを受け止めることも必要です。

江成:コミュニケーション能力がつかないまま転職を繰り返すと、給与面でも思い描く生活にならないことが多いですね。
女性の中には「責任のない仕事なら、子育てと両立できる」と思ってパートの仕事を転々とする人もいますが、それは思い込みです。世の中にはいろいろな仕事があるということをまず知ってほしい。表面的なことだけでなく、その仕事の中身や会社の創業をよく理解して、やっている人が少ない分野に先に飛び込むぐらいの先見性を持ってほしいです。

末吉社長:ゴルフの業界も、問題点はあります。高度経済成長とともにゴルフ場が開発され、投資物件が増え、現在も2300箇所ものゴルフ場がありますが、料金の値下げが進んでお客様の取り合いのようです。「セルフサービスのゴルフ場」と「おもてなしのゴルフ場」の二極化が進んでいるのですが、サービス品質を上げようという考えがあまりないです。

江成:そうなると、貴社のキャディさんがいるゴルフ場にサービス価値が生まれますね。

末吉社長:やっぱり料金をしっかり頂きながらサービスを上げようとするゴルフ場と取引が多くなります。

江成:それ自体が他との差別化になっていますよね。どの業界にも頭の古い人がいると思います。シングルマザーを雇用する側の企業の中にも、「女に何ができる」と下に見る風潮はあります。私たちは「これからは女性の意見を聞かないと成功できない」と理解している企業さんと組みますが、社会全体にその考えが広まるには、もう少し時間がかかるかもしれません。

末吉社長:そこを理解していないのはもったいないですね。

◆これからの仕事を通じて発信していきたいことがあれば、お願いします。
末吉社長:女性に限らず男性も同じですが、仕事には収入以外の価値があることに気付いてもらいたい。つまり仕事の対価が給料と思いがちですが、仕事が自分を鍛え、作ってくれるものだと思うのです。だから誰もがそのように思えて仕事に向き合えるといいですね。

江成:非常に共感します。お金をいただきながら学べるのは、仕事しかありません。ネガティブな出来事ももちろんありますが、そこから学べることがあるはずです。人間力を上げるために、何事も楽しんでほしいですね。子育てに成果を求めると苦しくなりますが、お母さんが社会と関わって学んでいく姿は子どもに大きく影響するはずです。

◆貴重なお話をありがとうございました。

ワークステーション株式会社
(インタビュアー:シングルマザーサポート 菅生由佳)

ひとりで悩まず、当協会の会員になりませんか?(無料)

登録・会費は無料です。
読むだけで勇気・元気・一歩踏み出せるメルマガをお届け
■3つの柱:1 お金を稼ぐ力を養う
■3つの柱:2 共感しあうコミュニティ
■3つの柱:3 再婚という幸せ