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日本教育工学会とは

一般社団法人日本教育工学会が扱っています「教育工学」は人文社会系と理工系,ならびに人間に関する学問分野を融合した学際的な学問です.教育工学の研究対象は,時代と共に変化してきました.

「教育工学」は学問領域として認められており,文部科学省の科学研究費補助金の研究領域の分科細目の1つとなっています.この細目「教育工学」には大学関係者を中心に多数の研究が申請されており,教育工学の研究が精力的に行われています.

研究成果発表までの経緯

協会が東京大学との研究を続けてきて約2年。その中で様々な角度から、協会の支援がどのように有効でシングルマザーの自立に役立つのかを考えてきました。そのための、エビデンスとして「研究成果」というのは大変重要な役割を担います。そのため、東京大学の先生たちのお力を借りて、成果発表を様々な学会で実施していただきました。その1つが、今回の日本教育工学会での発表です。

発表の内容概略 (研究発表より抜粋)   

「シングルマザーのキャリア支援に有用な要素の検討」

<あらまし> 本研究では支援サービスを利用して就業に至ったシングルマザーを対象に,経済的な自立の主観的評価,および相談できる他者の存在に着目し,自立支援サービスとの関連について調査を行った.その結果,職場で働きながら,より自立を感じるためには職場のコミュニケーションを持つことが有用であり,さらに自立支援サービスを通じてシングルマザーの「協力」や「インタラクション」が育まれた可能性が考えられた.

※本調査は2024年12月2日~26日に日本シングルマザー支援協会のサービスを利用して就業に至った者を対象に行われた

<結論>

  1. 自立を感じるためには,フルタイムや正社員,望ましい働き方に移行することが重要.そのために,立場や経験が異なる他者を含めた職場のコミュニケーションを持つことが有用
  2. 自立支援サービスを通じて, 「協力」や「インタラクション」が育まれた可能性が示唆された.特に「協力」することの楽しさやメリットを感じるような工夫が有用

研究成果の要約と特徴的な傾向

1)経済的自立主観評価に対する質問「現在のあなたは,経済的に自立していますか」を5段階(強く思う・そう思う・どちらとも言えない・そう思わない・全くそう思わない)の回答。 強くそう思う:22%・そう思う:29%と、合計51%が経済的自立主観評価で「自立している」と思えている。また、その人達はおおむね、年収300万円以上だとそう感じている傾向がある。

また、同じ経済的自立主観評価で「支援サービスを利用する前と比べて,現在の自分は自立していると感じていますか」を同じく5段階で聞いた回答。 強くそう思う:35%・そう思う:49%と、合計84%が支援後は経済的自立を感じていることが分かった。

これにより、協会の支援サービスは経済的自立主観評価への有用であると言うことができるのではないかと考える。

2)自立への意識変化と支援サービスとの関連について、自立に向けた変化をしていく中で重要だったのは「協力」と「インタラクション」であるとの結果がでた。特に「協力」の項目では、精度の高い数値が計測された。

≪協力の項目≫

「他の会員と協力して活動するような取り組みが用意されていた」「他の会員と協力して活動するような工夫があった」「他の会員と協力したほうがメリットを生むようになっていた」

「協力することの楽しさが感じられるようになっていた」「会員同士が協力したくなるようになっていた」

≪インタラクション(相互作用)≫

「自分のやっていることに不安が生じると、誰かが助けてくれそうな気がした」「会員同士が関わりをもてるようになっていた」「自分がやっていることの進み具合や達成感に対し、周りから応援してもらうことができた」「会員同士が交流しやすく参加できた」

このことから、協会のコミュニティとしての役割が機能していることや、多くのシングルマザーの事例や経験を多く有し情報提供できていることが有用であると考えられる。

3)補足として発表した内容

自立意識変化を強く感じていると回答した会員が利用した協会サービス

1位:メルマガ

2位:協会公式LINE

3位:各種アンケート

4位:愛されるコミュニケーション講座

5位:シングルマザーチャンネル(YouTube)

多くの人が協会のメルマガやLINEなどを受け取ってくれており、一方通行の情報提供ではなくインタラクション(相互理解)なツールとして機能していることがわかる。メルマガが1位であることに、参加者の大学教授は大変驚かれていた。

所感

学会発表という、ちょっと違う空気の場所でした。また、その他の研究発表と比べるとシングルマザーと言うカテゴリーは異質です。そもそもが教育者の方々の集まりなのですから当然ではあるのですが、興味深く聞いてくれる方が多かったのも事実です。

協会がずっと唱えてきた「シングルマザーは世帯主。正社員で長く楽しく働きましょう」が、何よりも自立した女性を増やしていくんだ!ということが、少しずつ証明されていくのを感じます。(山木)