企業とシングルマザーは、相思相愛だが国際結婚くらい常識が違う

朝、散歩をしながらいろんな家を見て楽しんでいます。我が家の周りは、いわゆる地主という人が多いのか、同じ苗字がものすごく多いです。100坪、200坪あるような広々した家と、区画分譲された住宅が点々と並ぶような場所です。こうやって相続の度に売っていくとすると、いつか広い土地の家は無くなるのか?など、貧乏人は妄想を膨らませながら散歩しています。



2013年7月に、私は日本シングルマザー支援協会を立ち上げた。約6年勤めてきた会社を9月に退職し、起業の道を選んだ。正直、しばらくの間は安定した生活を捨てたことを、軽く後悔する日々。そんなに簡単ではない。でももう戻れない。

必死に働いてきたこともあり、しばらくは生活できる貯蓄はあったが、ひとり親として5人の娘を育てる生活。それほど大した貯蓄があるわけでもない。それでも私はシングルマザーの自立支援がしたかった。

もっと普通に働ける環境を作れば、お金が無いという辛くて苦しい日々を過ごさなくて済む。その方法があることは、新宿で始めていたランチ会に集まる、自立している、又は自立を目指すシングルマザーとの会話の中で見えた。

「この方法を伝えれば、誰でも(当時はそう思っていたが、今は誰でもとは思っていない)容易に自立ができ、苦しまなくて済む」と思ったからだ。

協会を立ち上げて、ホームページを作ったら、たくさんの企業から問い合わせがあった。
・シングルマザーを雇用したい
・シングルマザーの力になりたい

シングルマザーからは
・自立したい
・働きたい、という相談が多くあった。

「これって両想いなんじゃないの?」と、少し不思議に思った。がことはそんなに簡単ではなかった。

シングルマザーを雇用したいという企業は多いが、中身を見れば、「安く使える」「簡単なパート仕事がいいだろう」という企業も中にはあった。安く使われたり、パートでは自立はできない。これはマッチしない。

素晴らしい企業からもたくさんお話しはきた。比率から言えば、8割良い企業、2割が悪い企業。素晴らしい企業は話しを聞いてくれる。「どんな働き方を望まれるのですか?」「いくらくらい収入があれば生活は安定しますか?」と。

また女性側の課題も見えた。「自分の大変さを理解してくれる企業が良い」「知っている仕事をしたい」「子どもが具合悪くなっても休みやすい会社が良い」という意見が多く、会社から報酬をもらうことは、会社の利益を上げることだという理解がとても低かった。

しかし、ほとんどの方が知らないだけで、伝えたら理解した。

企業とシングルマザーを含む社会復帰を望む女性は、本当は相思相愛だが国際結婚くらい常識が違う。自分たちの”当たり前”を、相手に押し付けてしまっている間は、根底では相思相愛でも、常識の違いから相容れることができず、結果募集を掛けても集まることもなく、採用できても直ぐに辞めてしまう。女性から見ると、自分の条件に合った仕事は、結果パートになってしまい、生活の安定に繋がる就職ができない。

それを解決するために、「主婦脳から世帯主脳へ」と就職を目指す方へのサポートを開始。日々の個別相談、リテラシー講座の受講、家計シュミレーションを丁寧にするようになった。今では「手当と養育費は全額貯蓄、生活費は自分の収入内で」と言う考え方を拡げている。

企業には、一旦応募基準を下げても、女性は安心して働きだしたら成長が早いということを伝え、就職のハードルを下げてもらい、就職後も私たちが伴走型定着支援を継続することを伝えていった。

それがMES(ミーズ)プログラムです。

今では年間70名~100名の方が、MES(ミーズ)プログラムを活用して、生活の安定を掴んでいる。このプログラムはまさに、シングルマザーの自立支援が無い中でも、自分の力で自立したシングルマザーがやっていたこと。ただそれをプログラムにしただけだ。

ひとり親支援の団体としては後発組だったこともあり、自治体事業には入れなかったが、だからこそMES(ミーズ)プログラムは生まれた。

ひとり親支援団体の運営から見れば、良い条件は揃わなかった。自治体に行っても「ひとり親支援はもうやってます」とたくさん言われた。いくら「自立支援の必要性」と伝えても理解してもらえなかった。が、違う視点で自立支援を構築してきたら、徐々に成果が出て、その成果を持って自治体に伝えに行くと、「違う自立支援なんですね」と理解されるようになってきた。

10年経って思うこと。シングルマザーに必要な自立支援を諦めずに伝え続けたことが、今やっと理解されはじめたと。これで頑張るシングルマザーが苦しまなくて済む。

いつかMES(ミーズ)プログラムが当たり前になるまで、続けたい