【第10回】「誰かに頼ること」と「自立」は、矛盾しない
『女性の自立は社会の未来を変える 〜機運醸成の時代に生きる私たちへ〜』
「自立したい。でも、人に頼ってばかりで、自信がないんです」そう語る女性の姿に、私は何度も出会ってきました。
でも、そのたびに私はこう返しています。
「頼れるってことは、自立への“大切な力”なんですよ」と。
■「自立=一人で頑張る」ではない■
日本では、「自立」という言葉が“自己完結”と結びついて語られることが多くあります。
なんでも自分でこなす。人の手を借りない。弱音を吐かない。
でも、それって本当に“理想的な自立”なのでしょうか?
本当の自立とは、「自分が必要だと思う助けを、自分で選んで使える力」だと私は考えています。
■事例:「相談すること」で人生が動き出した女性■
50代の女性。夫を病気で亡くし、長年専業主婦だった彼女は、年金生活を目前にして「これからの暮らしが不安」と協会に相談に来られました。
「自立って、もう遅いと思ってたんです」と話していた彼女が変わったきっかけは、たった1回のキャリア相談。自分の経験を整理し、できること・できないことを見つめ直したことで、「週3日なら働けるかも」という小さな決意が生まれました。
今では、営業職として働きながら、「誰かの役に立ててる実感がうれしい」と笑顔を見せてくれます。
彼女が最初にしたのは、“相談する”という行動でした。
「頼る」という選択が、人生を立て直す第一歩だったのです。
■支援やつながりは、“依存”ではなく“土台”になる■
助けを求めることに罪悪感を持つ人は少なくありません。
でも、どんな人も社会の中で生きていて、何かに支えられているものです。
育児、介護、就労、健康…
どんな場面にも「支え合い」があってこそ、前に進める。
自立は“孤立”ではないし、つながりの中にあってこそ、安心して選び、進むことができるのです。
逆に、孤立は自立を喪失させ、メンタル不全も引き起こします。相談するという力をつけましょう。
■自立には「頼れる場所」が必要■
だからこそ、私たちは「女性が頼っていい場所」をつくり続けています。
相談できること。味方がいると感じられること。
それは、未来を自分で選ぶための“心のインフラ”です。
「自立」と「支援」は対立しません。むしろ、それはセットで社会に必要なものです。
次回は、「女性の自立が進めば、社会はもっと優しく、もっと豊かになる」というテーマで、“自立の波及効果”についてお話ししていきます。