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共同で親権をもつことはできないの?

前回の最後に少しお話しましたが、日本における未成年の子どもの親権は、婚姻中は父母の両方が親権を行使する共同親権制度ですが、離婚後は父母どちらか一方のみが持つ単独親権制度を採用しています。

これは民法ができた明治時代から続いてきましたが、G20の中では、現在も単独親権を採用しているのは日本、インドなど少数派です。

 

そんな日本ですが、家族のあり方が多様化する中で、今、親権のあり方が今見直され始め、共同親権導入の是非につき検討が始まりました。

共同親権は、専門家の間でも賛否両論ありますし、共同親権制度にも様々な形があります。

 

共同親権のメリット

そもそも「親権」とは何でしょうか。

離婚時に意識されがちなのは「父母のいずれが今後子どもと暮らすか」ですが、民法では「親権を行う者は、子の利益のために子の監護(一緒に住んで養育すること)及び教育をする権利を有し、義務を負う」と規定しています。

親権は、(大別すると①身上監護権と②財産管理権の2つにわかれますが)居所指定権、懲戒権、職業許可権、財産管理権といった権利義務の総称が親権です。

ですので、共同親権とは、離婚後もこのような権利義務を父母が持ち続ける制度ということができます。

離婚後に父母の関係が悪いと、親権を得られなかった側の親は子どもの養育や生活、教育等に口出しができなくなるといった実情がありますが、共同親権の導入により、父母が積極的に子育てに関わることができるようになることが期待されます。

例えば、諸外国では共同親権のために日本よりもスムーズに面会交渉が行われており、平日は母・休日は父であるとか、学期中は母・休暇中は父と暮らすなど細かく決められ、様々な形があるそうです(共同養育)。

単独親権と比較すると、子どもの奪い合いがなくなるため、子どものことを考えた父母間の関係が築きやすくなると言われています(ただ、養育に関しての意見の対立へと形を変えるだけだとの指摘もあります)。

また、子どもの側から見ると、離婚しても親が極めて重要な存在であることは変わりありません。

共同親権により育児の質が維持されるとともに経済的に安定するため、単独親権の場合と比較して、心身の健全な発達が見られるともいわれます。

 

共同親権のデメリット

一方、デメリットも考えられます。

日本では離婚後の父母の関係は良くない方が多く、共同親権制度が採用されたからといって、父母間の心情的対立がなくなるわけではありません。

単独親権では、(通常は)子どもと暮らす親が子育てにつき一人で決めることができましたが、共同親権では、関係が良くない父母も話し合って結論を出さなければならないので、意見がまとまらず、スムーズな意思決定ができない危険性があります。

もめるたびに裁判所で結論を出すのは現実的ではないですから、例えば、意見が優先される親を決めておくなど、何らかの対応策も必要となるでしょう。

また、DVや虐待等の問題を伴う家庭の場合、親との関わりが子どもの福祉に反する結果となるケースもあり、殺人事件に発展してしまうこともあります。

諸外国では、安全に面会交流できる施設や更正施設があるなど、子どもを守るための制度も充実しています。

日本でも選択的共同親権や親権の制限・剥奪等についても慎重に検討しなければなりません。

 

まとめ

今年9月には、法務省が共同親権導入是非等を検討する研究会を年内に立ち上げ、数年かけて議論する見通しと報道されました。

また、11月には、別居親が単独親権制度は憲法に反するなどとして、東京地方裁判所に集団訴訟を提起したとの報道もありました。

離婚後の子どもと面会できていない別居親から共同親権の導入が主張されることがありますが、離婚後も父母の関係が良好な場合、親権者の所在にかかわらず十分な話し合いや、父と子どもとの関わりも十分に確保できますし、面会交流を強制する制度はないので、共同親権の導入=子どもに会えるようになる、ではありません。

しかし、このような発想になるのは、親権や面会交流権が親の権利ととらえられがちなことも一因と思います。

親権は子どもを育てる親としての責任・義務であり子どもの福祉・子どもの権利が最優先で守られるべきという視点から、何がベストなのかを考えるべきです。

離婚しても子どもの養育には積極的に関わりたいと望む親が増えてきたといえるのかもしれません。

その一方で、虐待等がなくとも別居親に子どもを会わせないケースも多く、共同親権制度の根本たる夫婦問題と子どもの問題は別問題という認識や覚悟が浸透しているかというと、個人的には疑問です。

たち親にも様々な事情も感情もありますが、ことは、親の使命だと思っています。

共同親権が導入されれば解決ではなく、いかなる制度であれ、各父母が、そして社会全体が、子どものために最も良い環境を作らなければならないという意思を持たないと実現は難しいでしょう。

難しい問題ですが、みなさんはどう思われますか?

アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/

 

日本シングルマザー支援協会より

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