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はじめに

弁護士の大上哲平です。

子どもを性犯罪に関わらせないことは、すべての親にとって重要な課題です。
そこで、子どもと性犯罪に関係する最新のトピックをご紹介したいと思います。

最近、銭湯や温泉施設での混浴年齢が引き下げられました。小学生の息子さんがいるシングルマザーのなかには、「大浴場に入れない」と残念に思う人もいるかもしれません。

そこで、1つ目はこの混浴年齢の引き下げに関するトピックをご紹介します。

2つ目のトピックは、2024年3月19日に閣議決定されたこども性暴力防止法(日本版DBS)を導入するための法案です。近年、保育施設などでも性犯罪関連のニュースが後を絶たないため、親自身が情報を知り、子どもを守る意識を高める必要があります。

この記事では、子どもを性犯罪に関わらせないようにするために親として知っておくべき法律や条例に関する情報と、その心構えについてお話したいと思います。

公衆浴場の混浴年齢を定める条例

国は、「子どもの発育発達と公衆浴場における混浴年齢に関する研究」の結果等を踏まえ、令和2年12月に「公衆浴場における衛生等管理要領」を改正し、公衆浴場における混浴制限年齢を引き下げました。

その結果、混浴できる年齢が、「おおむね9歳まで」だったのものが、「おおむね6歳まで」となりました。
この改正を受けて、多くの自治体で「公衆浴場法施行条例」等が一部改正され、実際に公衆浴場の混浴制限年齢が引き下げられた自治体もあります。

小学生の息子さんを持つシングルマザーからすると、幼い子どもを一人で男湯に入れて、転んで頭を打つのではないかとか、溺れるのではないかとか、色々と心配になりますよね。

今回の混浴年齢の引き下げによって、しばらく「大浴場に入れない」というシングルマザーの方もいらっしゃると思います。

ただ、先ほどの国が公表している研究結果によると、「4歳男児が女児に性器の違いに気づいて、ちょっと見せてと言ったりする」ことや、「衣服をいつでもどこでも脱いでしまう特性のある5歳女児に対して、5歳男児2名が園の裏庭に連れていき下着の中に手を入れたり、服を脱がせたり」したトラブルが発生していること、小学校教諭によると、「幼いころから、女子の体に触るくせのある男子が高学年になっても触ったり、更衣室について行こうとしたりしたことで指導の対象となった事例」があるとのことです。

もちろん、これは一例であって、4歳や5歳の男児全員がこのような行動を取るわけではありませんが、4、5歳から「水着で隠れる部分は人に見せない、触らせない」といった教育をしている保育施設が急増していることや、ユネスコが性教育の指針である「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」において、5歳児から性教育の学習を開始する必要があるとしている点にも納得できる事例といえます。

つまり、最新の研究では、息子さんが5歳や6歳を超え、少しずつ性的に多感になっている時期に、女湯でたくさんの女性の裸体を目に焼き付けさせることは、息子さんの性教育(ひいては息子さんが成人したときの異性への愛情の持ち方や性欲の持ち方への影響)にとって望ましくないと考える研究者が多いということです。

特にここ10年で、子どもたちの身体の発育と性に関する目覚めが早まっているという報告もありますので、私たちの子供の頃とは異なるのかもしれません。

たしかに、「大浴場に入れない」というのはつらいものですが、異性のプライベートスペースを守るという大切な意識を息子さんに持ってもらうためにも、今しばらく大浴場での入浴を我慢してみるというのも、親としての大切な心構えの一つなのかもしれません。

日本版DBS

韓国の新しいアイドルグループ名じゃありません。
「こども性暴力防止法(日本版DBS)」は、子どもたちを性犯罪から守るための法律です。

簡単にまとめると、幼稚園や学校の先生といった、子どもに接する職業に就く人々の経歴を事業者が確認し、性犯罪歴がある場合は適切な措置を講じることを目的とした法律です(私たちが前科を確認できるわけではありません)。

子どもに対する性犯罪は、子どもの心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えてしまいます。
子供に対する性犯罪は遠い国の話ではありません。

学校の教師が女子生徒に対して痴漢や盗撮をした事案、大手学習塾において、講師が女児を繰り返し盗撮していた事案、ベビーシッターとして派遣されていた人が20人の男児に性的暴行を加えた事案など、自己の立場を利用して子どもに対する性犯罪をおこなう事案が近年相次いで報道されています。

性犯罪の前科がある人の再犯率が高いというデータがあるため、性犯罪歴があるかどうかを事前に確認する日本版DBSは、性犯罪から子供たちを守るために効果的な法律であるといわれています。

日本版DBSの対象となる事業者は、次のように分類されます。

  1. 前科照会が義務である事業者(学校、幼稚園、認定こども園、児童館など)
  2. 認定を受けて前科照会できる事業者(民間学習塾、学童、スポーツクラブなど)
  3. 対象外:個人で行っている家庭教師やベビーシッター、医療機関など。

前科照会の流れは次の通りです。

  1. 事業者は、こども家庭庁に対して、職員の性犯罪歴の確認申請を行う。
  2. こども家庭庁は、職員に対して、戸籍を提出するように要求する。
  3. こども家庭庁は、提出された戸籍から職員の性犯罪歴を照会する。照会の結果、性犯罪歴がある場合、こども家庭庁は内定者・教員に事前通知を行い、職員が2週間以内に内定辞退や退職した場合、前科の照会結果は事業者に交付されない。
  4. こども家庭庁は、職員が退職等をしない場合、性犯罪歴に関する証明書を事業者に交付する。
  5. 事業者は、性犯罪的に関する証明書の内容をふまえ、子どもに対して性犯罪を行う可能性がある場合には配置転換や、場合によっては解雇などの措置を講じる。

このように、学校や幼稚園などは職員の性犯罪歴の確認が義務付けられているのに対して、民間学習塾や学童等は義務付けられているわけではありません。

そのため、今後、認定を受けていない事業者を利用する場合には注意する必要があります。
また、個人で行っているベビーシッター等は、こうした性犯罪前科の確認などによる安全性が担保されていないため、事前に情報収集を行ったうえで慎重に選ぶことをおすすめします。

まとめ

シングルマザーとして、一人でたくさんの責任を担うなかで、こうした新しい法律や条例の情報を機敏に察知し、子どもにとって健全で安全な環境を整えていきましょう。

アディーレ法律事務所京都支店 弁護士 大上 哲平
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