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はじめに
お久しぶりです。弁護士の池田昇右です。2023年4月に続いて、当コラムを執筆させていただきます。
さて、これから年末年始を迎えるにあたり、お子様を連れて新幹線や電車で帰省される方も多いのではないでしょうか。
私の場合、今は実家まで車で1時間半と、帰省といえるような行程ではなくなりましたが、子供の頃は新幹線で山口県の祖母の家に行くのが楽しみでした。
しかし、乗り物による移動は、小さなお子様を連れていると泣き声などが心配…。「ほかの乗客に迷惑をかけたらどうしよう…」と思われたことはありませんか?
そこで今回は、年末年始の帰省などで乗り物を利用する際に起こり得るトラブルについて、法律的な目線を交えて解説します!
皆様にとっても、お子様にとっても、楽しい思い出になるよう、ぜひ最後までご覧ください。
子どもが泣き止まない…。
周りに迷惑をかけ続けるとどうなるの?
まず、刑事上の結論としては罰せられません。
理由は、刑事責任が問われる最低年齢が14歳だからです。
また、親御さんについても、泣き声で周りに迷惑をかけているだけでは、刑法上罰せられる可能性は低いと考えられます。
次に民事上の不法行為責任ですが、これも認められないでしょう。
理由は、子どもの民事上の責任能力は12歳前後だからです。親についても、「子供が泣いていることについて過失が認められるのか」、「損害や損害額を立証できるのか」の問題があるので、やはり認められる可能性は低いでしょう。
したがって、法律に触れることはありませんし、電車を降りる法律上の義務もありませんのでご安心ください。
しかし、ほかの乗客に多少なりとも迷惑がかかることは事実ですし、親御さんとしても周囲の目線が気になることでしょう。
そこで、「音の出ない新しいおもちゃを与える」、「スマホやタブレットで動画を見せる」などの方法をお試しいただければと思います。
混雑する車内。
「子どもは膝の上にのせて、席を空けてほしい」
と言われたら?
まずは指定席の場合です。
幼児を連れて列車に乗る際、指定席を利用し幼児にも座席を使わせる場合は、幼児のきっぷも購入しなければいけません。
一方、幼児を膝の上にのせるなどして座席を使わない場合、おとな1人分の運賃のみで乗車できます。
つまり、幼児の分の切符を買っているかどうかで、幼児が1席使えるかどうかが変わってきます。
これは、空けるかどうか以前の問題ですね。
なお、幼児ではなく小学校1年生以上であれば、当然切符は買わなければなりません。
次に自由席の場合。ルール上は、幼児が座席を利用していても何も問題はありません。
「席を空けてほしい」と言われたからといって、空ける義務はないのです。
とはいえ、現実的な対処法としては、幼児の分も指定席を購入しておく方が無難かもしれません。
空ける義務はないといっても、万が一トラブルなどに発展してしまうと、せっかくの帰省が台無しになってしまいますからね。
「子ども、うるさいなあ…」
もし、
心ない言葉を言われたら?
「子ども、うるさいなあ…」と言われた程度では、通常は、刑事上の罪に問うことはできないでしょう。
しかし、そこからさらにエスカレートして、「殴るぞ」などの“害悪の告知”があれば脅迫罪が成立する可能性があります。
また、害悪の告知をしたうえで、親に泣き止ませるよう要求した場合には、強要罪が成立する可能性があります。
ほかに、「バカ」や「アホ」などの誹謗中傷を行った場合には、侮辱罪が成立することもあるでしょう。
実際には、子どもの泣き声だけでそこまでのトラブルに発展することは多くないかもしれません。
仮に、先ほど挙げたような事態に発展したとしても、「だからって、訴えたりするのも大変だし…」と思われる方も多いでしょう。
ですから、現実的な対処法としては、さしあたり謝ってしまうのが無難かもしれません。
それでも、苦情を言われ続けるようであれば、「車両を移る」、「車掌さんに相談する」といった行動を取ることになるでしょう。
そのほか事前の策として、「移動時間を子供のお昼寝時間に合わせる」ことも考えられますので、ぜひ検討してみてください。
まとめ
今回は、法律上の観点を交えて、発生しそうなトラブルに対する対処法などをお話ししました。
しかし、何より大切なのは、「そもそもトラブルにならないようにしておくこと」かと思います。トラブルは、起きた時点ですでに嫌な思いをしてしまいますからね。
いくつかご紹介したように、「指定席を購入しておく」、「タブレットを用意しておく」、「子どもの睡眠時間を移動に合わせる」など、事前にできる対応策は多数あります。
また、JRでは子ども専用車両を導入している路線もありますので、そちらを検討してみてもいいかもしれません。
皆様の年末年始の帰省が、無事何事もなく、楽しいものになることをお祈りいたします。それでは、よいお年を!
アディーレ法律事務所奈良支店 弁護士 池田昇右
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