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はじめに

国交省の調査によると、日本の自転車保有数は約6,870万台と乗用車と同程度であり、2人に1人が自転車を持っている計算になるそうです。維持費が安くガソリン代もかからない自転車は、ママの強い味方ですよね。しかし、ルールを守らず、危険な運転をしている場面も多く見受けられます。ご自身、そしてお子さんの命を守るためにも、今回は、知っているようで知らない自転車のルールをご紹介します。

自転車に乗るときのルールを理解しよう

警察庁の統計によると、令和2年中における自転車乗用中の交通事故による死者の80.0%、負傷者の62.2%は、自転車側にも何らかの法令違反が認められています。家族を守るためにも、ルールを知り、事故を防ぎましょう。

自転車の基本ルール

自転車は運転免許が不要で、幼少の頃から慣れ親しんでいる方も多いためか、自転車は”歩行者の仲間”と誤解されがちです。法律上、自転車は「車両」の一種である「軽車両」、つまり”車の仲間”とされており、さまざまなルールや罰則が定められています。まずは、自転車運転の基本的なルールを覚えましょう。

1.車道を左側通行

先ほど述べたとおり、自転車は法律上「軽車両」なので、原則、車と同じ車道の左側を通行しなければならず、自転車道があるときは自転車道を通行します。

なお、右側通行による逆走は、自動車から認識されづらく、正面衝突となるため大変危険であり、正しく左側走行をしていれば防げた事故は数多くあります。車道の左側を端に寄って通行しましょう。

そして、自転車で歩道を走っている方もまま見かけますが、自転車が歩道を走行できるのは例外であり、次の条件を満たした場合です。

● 歩道走行可の標識がある場合

● 標識はないが、以下に当てはまる場合

  • 13歳未満(小学生以下)の子ども、70歳以上の高齢者
  • 身体の不自由な方
  • 道路工事や駐車車両により左側を通行するのが困難である、著しく交通量が多く道路が狭いため接触事故の危険があるなど、やむを得ない場合

  歩道を走る場合は、標識があるときは指定の通行場所を、標識がないときは車道側をすぐに止まれるスピードで通行(徐行)します。

ちなみに、ベルを鳴らして歩行者をどかして走行する方がいますが、これはダメ。歩行者優先であり、道を譲らなければならないのは自転車側です。

逆走したり、歩道通行禁止に違反すると、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。また、歩行者の通行を妨害すると、2万円以下の罰金または科料に処せられる可能性があります。

2.信号や一時停止を守る

自転車も必ず信号を守らなければなりませんし、一時停止の標識がある場所では、車と同様に自転車も一時停止をします。踏切を通過するときも、車と同じく踏切の直前で停止して、安全確認をしなければなりません。

信号無視は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金、一時停止違反(指定場所)は、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金、踏切での一時停止違反は3か月以下の懲役または5万円以下の罰金の罰則があります。

3.夜間はライトを点灯

法律上、公道を走る自転車には、ブレーキ、ライト、反射器材の装備が法律上義務づけられており、夜間走行するときはライトを点灯させなければなりません。夜間は特に車から自転車の存在は認識されづらく極めて危険ですから、運転するときは明るいライトを点灯させ、後部には視認性のよい反射板やテールライトを付けて、周りに自転車の存在がわかるようにしましょう。

夜間の無灯火の罰則は、5万円以下の罰金です。

4.飲酒運転は厳禁!

自転車も車と同様に飲酒運転は禁止です。

自転車の場合は、酒気帯び運転(呼気1リットル中にアルコール量が0.15mg以上)では罰則はなく、酒酔い運転(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態での運転)のみ罰則があり、5年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。

アルコールは身体運動能力、認知能力を低下させるので、酔った感覚や罰則の有無にかかわらず、少しでもお酒を飲んだら絶対に運転をしてはいけません。

5.2人乗りはダメ!

自転車の2人乗りも原則として禁止されており、違反すると、2万円以下の罰金または科料に処せられる可能性があります。

16歳以上の運転者が、自転車に装着した幼児用座席に6歳未満の幼児を乗せる場合など、例外的にOKな場合もありますが、各都道府県によって条件が異なるので、お住まいの自治体の規定を確認してみましょう。

6.「ながら運転」「片手運転」はダメ!

各都道府県の道路交通規則により、スマホの通話や画面注視、イヤホン・ヘッドフォンで音を聴くといった「ながら運転」、傘差しや物を持ちながらの片手運転も違反とされており、罰則は罰金5万円です。

7.並走はダメ!

友人と話しながら自転車で並んで走行した経験があるかもしれませんが、並進可の標識がない限り、2台並んでの走行も禁止されています。罰則は、2万円以下の罰金または科料です。

自分の子どもが加害者になる可能性も!

自転車は幼少から慣れ親しむ乗り物なので、あまり危険な乗り物だとは思わないのではないでしょうか。しかし、たとえ子どもが運転していた自転車だったとしても、交通事故により相手を死傷させてしまうと、多額の賠償義務を負う可能性もあるのです。

   実際の裁判では、夜間、小学生(11歳)の運転する自転車と歩行者が正面衝突し、被害者の意識が戻らない状態となり、約9,500万円の賠償を命じられたケース(神戸地裁平成25年7月4日判決)、ペットボトルを片手に持ったまま、減速しないで交差点に侵入し、横断歩道を横断中の被害者と衝突、被害者が死亡し、約6,700万円の賠償が認められたケース(東京地裁平成15年9月30日判決)など、高額な慰謝料の支払いが命じられた事例もあります。

   

   万が一の事故に備えて、自転車保険の加入が義務づけられている地域も増えてきていますが、自転車保険やTSマーク付帯保険のほか、車などの任意保険に付帯している個人賠償責任補償特約でカバーされることもあります。自転車を利用する家族全員が高額賠償にも対応できるか、加入されている保険の内容を確認してみましょう。

キッズバイクは公道での乗車禁止?

近年、幼児でも乗りやすく、バランス感覚が養われるということで、ペダルがなく足で地面を蹴って漕ぐランニングバイク(キックバイク、バランスバイク)が大変人気となっています。

多くのランニングバイクは、法的には自転車ではなく遊具と考えられますが、法律上、交通の頻繁な公道で遊具を使用することは禁止されています。スピードが出がちですし、ランニングバイク関連事故の半数は道路で発生しており、過去には死亡事故も起きています。ルールを守り、公園などの安全な場所で利用しましょう。

過去コラム:自分や子どもの行動がきっかけで、事故・トラブルを起こしてしまったら

歩行者にも、守るべきルールがあります

歩行者優先とはいうものの、歩行者だからといって何をしてもOKというわけではなく、法律は歩行者にもルールを課しています。どんなものがあるのか、チェックしてみましょう。

歩行者が守らなければいけないルール

1.右側通行

「車は左、人は右」と言ったりしますが、その通り、歩行者は、歩道等がない道路では右側通行とされ、自動車と人は、お互いに「あそこにいるから気をつけよう」と認識できる状態で通行することになります。歩道がある場合は歩道を歩きますが、このときは左右の指定はありません。

2.青信号の点滅で交差点を渡る

歩行者信号の青信号が点滅しているときは、道路の横断を開始してない場合はそのまま止まり、横断中の場合は速やかに渡りきるか引き返さなければいけません。

3.横断歩道を利用する

横断歩道や信号機のある交差点が近くにあるときは、その横断歩道や信号で横断しなければいけません。

ただし、横断歩道上では車との事故が発生しやすいため、「横断歩道だから」、「青信号だから」と安心せず、横断前を含め、安全確認をしっかり行いましょう。

また、「歩行者横断禁止」の標識がある場所やガードレールが設置された場所での横断はしてはいけません。

4.斜め横断の禁止

交差点で斜め横断可の標識等がある場合を除いて、道路を斜めに横断することは禁止されています。

道路横断中は、歩行者が被害者となる事故が発生しやすくなっています。歩行距離が最短となるよう、横断歩道上をまっすぐに渡るようにしましょう。

5.直前直後の横断禁止

①横断歩道を横断するとき、②信号や警察官の手信号に従って横断するときを除いて、車の直前、直後の横断も禁止されています。

子どもを守るために親が守るべきルール

子どもの命を守るために大切なのが、「幼児用座席の利用」と「ヘルメットの着用」です。

2人乗りの例外として、自転車の前または後ろに幼児用座席をつけて運転をすることが認められています。幼児用座席は、幼児にとっては身長より高い位置となり、落下すると極めて危険です。幼児用座席を利用するときは、必ずシートベルトを着用し、製品ごとに定められた体重上限や目安身長などを守り、正しく利用することが大切です。

また、4歳未満の幼児をおんぶして運転することも認められていますが、抱っこひもなどでだっこをしての運転は禁止されています。詳しくは各都道府県ごとにルールが定められているので、確認しましょう。

さらに、道路交通法上、13歳未満の子どもを自転車に乗車させるときは、ヘルメットを着用させる努力義務が親に課されています。つまり、子どもを親の自転車に装着した幼児用座席に乗せる場合や、子ども自身が自転車を運転する場合は、ヘルメットを着用させるよう努力する義務を負っている、ということです。なお、法律では親のヘルメット着用についての規制はありません。

しかし、独自のルールを定める自治体もあり、たとえば愛知県では、大人にも子どもにも、自転車乗用中のヘルメット着用義務を課す条例があります。また、ヘルメット購入補助金がもらえる地域もあります。

確かに、現時点ではヘルメットを着用しなくても罰則はありません。愛知県の条例が施行された際には、「髪型が崩れる」、「ダサイ」などの理由から、ヘルメットは着用しないという声も多く聞きました。

実は、自転車死亡時事故では、約6割以上が頭部に致命傷を負っています。公益財団法人交通事故分析センターによると、この頭部損傷のほとんどが車の車体や路面によるもので、ヘルメットを正しく着用することで、頭部損傷による死者はおよそ4分の1に減るとされています。

そうすると、ヘルメットを自ら着用し、子どもにも着用させることは、親の責務とも言えるのではないでしょうか。子どもは着用を嫌がるかもしれませんが、個人的には、ヘルメットをしなかったことで後悔したくはありません。ヘルメットやシートベルトの着用は、自分を守るために大切なことだと子どもに繰り返し話し、着用することが当たり前と思える環境を作らないといけないと改めて思います。

なお、自転車ではなく遊具であるランニングバイクは、このヘルメット規制の対象外です。しかし、交通事故や転倒の危険性を考えると、子どもの命を守るためにヘルメット着用が必須なことは言うまでもありません。必ずヘルメットをかぶらせ、安全な場所で遊ばせるようにしましょう。

まとめ:ルールを守ることは、命を守ること

私は日常的に車を運転していますが、自転車が、車道で車と併走するところも多く見るようになりました。しかし、車道に大きくはみだして走行したり、後方の安全確認をしないまま突然車の前に飛び出すなど、重大な事故につながりかねない危険な場面にも時折遭遇し、自転車は車道走行しなければならないというルールの一部だけが、クローズアップされすぎているのではないかと感じることもあります。交通ルールを守ることは、加害者にも被害者にもならないこと、自分や大切な家族の命を守ることにも繋がります。自分の命は自分で守れるよう、子どものころから日々声かけをしていきたいと思います。

アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/

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日本シングルマザー支援協会より

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