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はじめに
結婚するカップルのうち、夫または妻のどちらかが再婚であるカップルの割合は近年上昇しており、子ども連れで再婚するケースも珍しくありません。読者の皆さんのなかにも再婚を考え始めたという方がいらっしゃるかもしれませんね。では、ご縁があって再婚する場合、自分の子どもと再婚相手の男性は、法的にどのような関係になるのでしょうか?
再婚後、子どもと夫の関係はどうなるの?
交際相手と再婚する場合、あなた・子ども・再婚相手は“家族”になりますね。
通常、父親と母親は子どもを扶養する義務を負います。なので、家族になれば、再婚相手は“あなたの子どもを扶養する義務がある”と思われる方も多いかと思いますが、これは正しいのでしょうか?
いいえ!実は、単にあなたと入籍しただけでは、再婚相手はあなたの子どもを扶養する義務を負わないのです。というのも、再婚相手とあなたの子どもは、この段階だと、法的な親子になっていないからです。再婚相手とあなたの子どもが法的な親子になるためには、”養子縁組“をしなければなりません。
養子縁組とは?
養子縁組とは、血縁関係のない人同士(今回の例だと、あなたの子どもと再婚相手の間)に親子関係を発生させる制度です。養子縁組をすることで、血のつながった親子と何ら変わりない親子関係であることが法的に認められます。
「養子縁組をしなくても、名字は同じにできるし法的な親子関係は必要?」と思う方もいるかもしれません。ですが、扶養義務や相続など、親子関係がないと困る場面は多くあります。
養子縁組の種類
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組があります。
この2つの縁組の大きな違いは、養子縁組をしたあと、「実親との親子関係がどうなるか」です。
普通養子縁組の場合は、養子縁組をしたあとも、実親との法的な親子関係が継続します。ですので、子どもには実親と養親の2組の親がいる状態になります。
特別養子縁組の場合は、養子縁組をすると、実親との法的な親子関係がなくなります。つまり、養親だけが親となります。
「実親との親子関係がなくなる?初めて知った!」という方も多いのではないでしょうか。特別養子縁組とは、虐待等の特別な理由で親が子どもを育てられないという事情を背景に創設されたものです。実親と子どもの親子関係を断ち、養親が子どもを家族として家庭に迎え、自分の子どもとして育てることで、子どもが生涯安定した家庭生活を送るための制度です。
それぞれの違いについて、表にして見てみましょう。
普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
縁組の成立 | 養親と養子の同意により成立 | 家庭裁判所が決める 実親の同意が必要 子の利益のために特に必要があるときに成立 |
要件 | 養親:成年に達した者 養子:養子が養親より年下であること | 養親:満25歳以上の夫婦(ただし、一方が25歳以上であれば、一方は20歳以上でよい) 養子:原則15歳未満 |
実親との親族関係 | 実親との親族関係は継続する | 実親との親族関係が終了する |
監護期間 | なし | 6月以上の監護期間を考慮して縁組 |
戸籍の表記 | 実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載 | 実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」等と記載 |
離縁 | 当事者の協議で可能 | 家庭裁判所の審判が必要 |
普通養子縁組の場合、子どもには“実親”と“養親”という2組の親がいることになり、扶養や相続が二重に生じることになります。つまり、子どもは、実父・再婚相手のどちらからも扶養を受け(将来的には子どもが実父・再婚相手のどちらも扶養する義務を負う)、実父が死亡した際も再婚相手が死亡した際も相続人になります。
他方、特別養子縁組の場合には、実親との親子関係はなくなるので、養親との間でのみ扶養や相続があります。
シングルマザーの再婚、どちらの養子縁組が多い?
一般的に、シングルマザーの方が再婚する際には、普通養子縁組を行うケースが多いです。
再婚相手と子どもを養子縁組すると、再婚相手から子どもへの扶養義務や相続権が生じます。再婚相手には“法的な親”としてあなたの子どもの面倒を見て、育てる義務が発生します。同時に、将来的に子どもは、養親である再婚相手の面倒をみる義務が発生します。
名字は養子縁組をすると再婚相手の名字に変わるので、特別な手続は不要です。
養子縁組のメリット・デメリットとは?
【養子縁組のメリット】
〇再婚相手と子どもの間に、実子と同じように親子関係が成立するので、子どもは再婚相手から扶養を受けることができます。そして、この親子関係は原則として生涯続くことを予定しているので、双方の遺産を相続することもできます。
【養子縁組のデメリット】
〇子育てが初めてだという再婚相手の場合、養子縁組で初めて子どもの生活費や教育費等の経済的負担を目の当たりにする方もいます。再婚相手の理解がないまま養子縁組をしてしまうと、後にトラブルとなるケースもあります。養育に関する経済的な事情について、再婚相手と事前によく話し合いましょう。
〇元夫から養育費をもらっている場合、養子縁組によって養育費が減額になる可能性があります。養子縁組をすると、再婚相手が子どもの第一次的な扶養義務者となるので、再婚相手の収入に応じて、前の夫の扶養義務が軽くなったり、負担がなくなったりする場合があるのです。
〇再婚相手と再度離婚しても、親子関係は自動的に解消されません。子どもと再婚相手の親子関係を解消するには“離縁”の手続きが必要となります。
養子縁組後の相続
普通養子縁組をした場合、縁組後、相続は二重に発生します。つまり、実親が亡くなったときにも、養親が亡くなったときにも、子どもは相続します。
特別養子縁組をした場合、実親との親子関係は抹消されるので、実親が亡くなったときには相続権は生じません。養親が亡くなったときは相続します。
戸籍上はどうなる?
養子縁組を行うと、養子は養親の戸籍に入ります。
普通養子縁組の場合には、戸籍の続柄には「養子(養女)」と記載されます。ですので、戸籍を見ると養子であることがわかります。
他方、特別養子縁組をした場合には、戸籍の続柄には「長男(長女)」等と記載されます。住民票は続柄までしか記載されないので、「長男(長女)」等と記載されるのみです。なお、養親の戸籍には、「民法817条の2による裁判確定」等と、特別養子縁組に関する民法の条文番号が記載されます。
(関連記事⇒離婚してもそのままの苗字を名乗ることはできる?子どもの戸籍は?【YES・NOで必要手続がわかるチャート付き】)
養子縁組をしないが子どもの名字を変えたい場合
「子どもの名字は変えたい!でも、急に再婚相手へ子どもの扶養義務を負わせることは戸惑う…」、「少し様子を見てから養子縁組をしたい…」という方もいるかと思います。
再婚相手と子どもを養子縁組せず、単にあなたが再婚相手との婚姻届を提出すると、あなたは再婚相手の戸籍に入ります。しかし、あなたの子どもは、再婚相手の戸籍に入るわけではないので、必要な手続をしないと子どもの名字は変わりません。
学校等の事情で子どもの名字を変えたくない場合には、そのままでも問題ありません。しかし、実生活での支障や利便性から名字を変えたい場合には、「子の氏の変更」を裁判所へ申請することができます。
この手続を踏むと、再婚相手に扶養義務を負わせなくとも、子どもが再婚相手と同じ名字を名乗ることができます。
まとめ:養子縁組は、再婚相手とよく話し合って
新しく家族になることは、お子さんにとっても、再婚相手にとっても、大きな変化になります。お子さんと再婚相手が一緒に過ごす時間を増やすなかで、将来について再婚相手の方とお話しする機会があるかと思います。ぜひ今回ご紹介した養子縁組について、そのメリット・デメリットを踏まえ、よくお話しください。お子さんにとってよりよい選択ができることをお祈りします。
アディーレ法律事務所 弁護士 鈴木美穂
https://www.adire.jp/profile/suzuki_miho/
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