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はじめに

今年4月から「大人」が変わります。明治時代から約140年間、成人になる年齢(成年年齢)は20歳とされてきましたが、初めて改正がされ、今年4月1日から18歳に引き下げられるからです。

そのため、高校などの学校に在籍していても、4月1日時点で18歳、19歳の子どもたちが一度に成人を迎え、4月2日以降は18歳の誕生日に成人を迎えることになります。

18歳だとまだ社会人でない方も多く、親としては心配になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

お子さんを守るためにも、この改正によりどのような影響があるのか知っておきましょう。

成人になると何が変わるのか?

まず、成人すると、一人でも契約ができるようになります。

未成年の間は、携帯電話の利用、課金、クレジットカードの作成、ローン、アルバイトなど、契約をするには親の同意が必要とされており、子どもが勝手にした契約は親が取り消すことができます。

しかし、成人すれば親の同意は不要になり、一人で自由に契約ができるようになります。

さらに、成人すると親権に服さなくなるので、進学・退学・就職といった進路の決定、住む場所の決定、財産の管理、医療・治療など、自分の意思で決められるようになります。

しかし、これまで通り20歳にならないとできないこともありますので、18歳で成人したらできるようになること、これまでと変わらないことの一例を挙げてみましょう。

成年(18歳)になったら新たにできるようになること

携帯電話の契約、ローンを組む、クレジットカードを作る、部屋を借りる、10年パスポートの取得、結婚(女性は結婚できる年齢を16歳から18歳に引き上げ)、重国籍者の国籍選択、国家資格取得(公認会計士、司法書士など)、性同一性障害の方の性別変更の申立

これまで通りで20歳にならないとできないこと

飲酒・喫煙、公営ギャンブル(競馬、競輪、オートレース、モーターボート競走)、養子を迎える、大型・中型自動車運転免許の取得、国民年金に加入

養育費はどうなる?

この改正により「今もらっている養育費が減らされてしまうのではないか」と心配されている方もいるかもしれません。

まず、すでに養育費の取り決めがされている場合は、原則として影響はありません。「20歳になるまで」など終期がはっきり定められているときは、その月まで支払ってもらえます。また、「養育費を成人するまで支払う」と定めているときも、取り決めをした時点での成人は20歳ですから、特別の事情がない限り、養育費は20歳まで支払ってもらえると考えられます。

しかし、これから取り決めをする場合は注意が必要です。4月1日以降は成人=18歳となりますから、「成人するまで支払う」とすると、これまでより支払期間が短くなりますし、トラブル防止のためには終期を「○歳の○月まで」など明確に定めておくとよいでしょう。

18歳の誕生日時点で多くの子どもは高校生であり、成人が18歳となっても経済的自立を期待することが難しい状況が変わるわけではありません。実務上、子どもや家庭の諸事情に鑑み、子どもが経済的に自立する時点をいつとすべきか(養育費をいつまで払うべきか)は具体的に検討されています。たとえば、20歳に達する日の属する月までや、22歳に達したあと初めて迎える3月まで(一般的な大学卒業まで)など、実態に即した判断がされていますし、実際そのような取り決めも多くみられます。このような流れは4月以降も大きく変わらないと思われますが、これから養育費の取り決めをされる方はご注意ください。

(関連記事⇒養育費をきちんと受け取れる人はなんと3割以下!「公正証書」で未払いを回避しよう)

悪質商法に巻き込まれないために親ができること

成人すると子どもの自由が増える反面、親が契約を取り消すことができなくなるので、子どもの「自己判断」「自己責任」はとても重要になってきます。

しかし、知識や社会経験の乏しい18歳、19歳の子どもをターゲットとした悪徳業者や消費者トラブルが増えることも懸念されます。

トラブルに巻き込まれないためには、どのようなことに気をつければよいのでしょうか。

「無料体験」や「サプリのお試し価格」、「もうかる投資話」には要注意!

“エステなどで「無料体験」「無料キャンペーン」とうたって初回だけ無料でサービスを提供するが、別のエステや化粧品などの有料の契約をさせる”、

“友人関係を利用して「絶対もうかるいい話がある」と勧誘させ高額な契約をさせる”、

“ネットで「お試し」でとても安くなっていたサプリを頼んだら定期購入になっていて高額の請求がきた”など、中には我々大人も騙されかねないトラブルもたくさんあります。

”簡単にもうかることはない”“オイシイ話には裏があると疑え”ということは知っていても、若者は知識や経験が不足していたり、親しい友人に誘われたから信じてしまったりなど、安易に契約をしてしまう可能性が高いのです。

クーリング・オフを知ろう

いったん契約が成立すると一方的に解除することはできないのが原則ですが、一定の契約については、無条件で契約をなかったことにできる「クーリング・オフ」という制度があります。違約金や賠償金の支払いが発生することはありませんし、すでに支払ったお金も返金してもらえます。

下記の7つの取引類型に該当する場合、定められた期間中(業者から契約書面を受領した日を含めてカウント)に、業者に対し、書面で契約解除通知書を送ることが必要です。クレジット支払いの場合は、信販会社にも通知をします。

特定商取引法より

取引類型 期間(契約書面を受領した日含む)
訪問販売自宅・職場への訪問販売、キャッチセールス、アポイントメントセールス、SF商法8日間
電話勧誘販売 8日間
特定継続的役務提供一定の条件を満たした、エステ、語学教室、家庭教師派遣、学習塾、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療サービス8日間
連鎖販売取引マルチ商法20日間
業務提供誘因販売取引内職商法、モニター商法20日間
訪問購入貴金属等の訪問買取8日間

契約期間、金額、対象外の取引・サービスがあるなど一定の条件がありますが、業者からの契約書面の交付がなかったり、契約書面にクーリング・オフについて記載がない場合は、上記の期間を超えてもクーリング・オフができます。

また、よくご相談があるのですが、コロナ禍で需要が増えたネットショッピングなどの通信販売は、クーリング・オフの対象外です。

返品については事業者が定めた特約の内容に従うことになりますので、返品不可と記載があれば、返品できません。

購入前に、HP内に返品の可否や取引条件、販売者の連絡先などをしっかり確認し、落ち着いて購入しましょう。

また、少しでも怪しいと思ったら利用はやめましょう。

なお、「返品不可」などの返品特約の記載がない場合、商品を受け取った日から8日以内であれば、返品できます(送料は購入者負担)。

なお、キャッチセールス(路上勧誘)で利用した飲食店等もクーリング・オフ対象外です。

親ができることは?

未成年の間とは異なり、成人すると親でも契約を取り消すことはできなくなります。しかし、法的には成人といっても、知識や経験が不足しており、判断能力もまだまだ未熟です。

契約は口約束でも成立するものも多いので、自分で判断する力を育むために、“行動する前に信頼できる人に相談する”、“内容をしっかり確認・理解するくせをつける”、“不要なものや怪しいものはキッパリ断れるようにする”など、日常生活を通してトラブルを防止するための慎重な行動を身につけさせることは、今後さらに大切になるでしょう。

また、成人することで法的にできることは増えても、進路などの重要な場面で親子での話し合いは、変わらず大切です。成人になることの意味と責任について話し合ったり、普段からいろいろと相談しやすい親子関係を構築しておくこと、それに加え金融教育などのお金にまつわる知識や知恵を学ばせる、消費者トラブル事例・手口を知るなどの対策を講じたりすることも、トラブル防止に繋がると思います。

もしも巻き込まれてしまったら…

思いもよらぬトラブルに巻き込まれてしまったときは、一人で、ご家庭だけで解決しようとせず、できるだけ早く、窓口に相談しましょう。

取引トラブルであれば、消費生活センター(消費者ホットライン「188(いやや)」(全国統一番号)で最寄りの相談窓口を教えてくれます)、国民生活センター、弁護士などへ相談しましょう。

クーリング・オフなど期限があるものもあり、素早い対応が解決に繋がることも多くあります。

まとめ:いつか旅立つ子どもたちのために

これからは法的に大人になるのが2年早まりますが、18歳成人はグローバルスタンダードになっています。

一生懸命育ててきた子どもが大人になるのは、親としても大変感慨深いものだろうと思います。

大切な我が子をトラブルの被害者にも加害者にもさせず、これからの人生を自分で考えて判断し、自立して生き抜く力を身につけさせるために、「青年は目を離せ、そして心を離すな」。

親として伝えるべきことは伝え、寄り添って見守り続けていきたいですね。

アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/

日本シングルマザー支援協会より

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成人年齢が変わる!子どもの生活はどう変わる?養育費への影響は?