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離婚時の不安要素!財産分与や慰謝料、養育費に税金はかかる?/アディーレ法律事務所 弁護士:鈴木美穂

はじめに

誰かからお金をもらうときには、贈与税や所得税といった税金がかかるのが基本です。

離婚時に決めなければならないお金のあれこれ。夫婦共同で築いた貯蓄額の大きさや婚姻期間の長さによっては、財産分与でかなりの額を受け取ることもあるかと思います。

財産分与や慰謝料、養育費などは資産の移転を伴うことから、ここでは、これらのお金への課税リスクについてお話しします。

財産分与に税金はかかる?

たとえば、妻が夫から2,000万円の贈与を受けたとします。この場合、たとえ夫婦であっても、原則として、妻には贈与税という税金がかかります。

では、離婚時に夫が妻に対して、財産分与として2,000万円を分与する場合、妻には贈与税がかかるのでしょうか。

実は、財産分与によって受け取った財産は、原則として課税されません。

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が共同で形成してきた実質的共同財産を分ける制度です。財産分与は、相手の財産から贈与を受けるものではなく、夫婦で築いてきたものを、夫婦で分け合うべきものとして清算するだけ、つまり、受け取る権利として潜在していたものを実際に受け取るだけなのです。

そのため、通常は贈与税の心配はいりません。

財産分与に税金がかかるケース

ただし、財産分与であっても贈与税がかかる場合があります。

受け取る財産が夫婦のもう一方より極端に多い場合

たとえば、夫婦の実質的共有財産が2,000万円しかなかったとします。財産分与の2分の1ルールによれば、通常、それぞれの取得分は1,000万円ずつとなります。ところが、夫が妻に財産の全部である2,000万円を分与する場合に、特に合理的な事情がなければ、妻が取得する財産は多すぎると評価され、1,000万円の部分については贈与税がかかります。

税金を免れるために行った偽装離婚と判断された場合

偽装離婚と判断された場合は、離婚によってもらったすべての財産に贈与税がかかります。

たとえば、夫婦の間にまったく離婚する意思がないのに、相続税の適用を免れるために離婚届を出して財産を分与するような場合です。

自宅を分与する場合

自宅などの不動産を分与するときは、譲渡取得の課税対象となる場合があります。

たとえば、夫が妻に対して、10年前に5,000万円で購入した自宅を財産分与として分与した場合、財産分与の時点で自宅の時価が不動産の取得費に譲渡費用を加えた金額を上回っていれば、夫はその差額(譲渡益)について、譲渡所得税を支払わなければならない可能性があるのです。

財産分与で受け取る財産が不動産の場合

不動産取得税

不動産を受け取ると、「受け取った側」にも税金(不動産取得税)が課せられる可能性があります。

不動産取得税の詳細、非課税となる要件、軽減措置等については、お住まいの自治体のホームぺージなどで最新情報をご確認ください。

では、財産分与として不動産を取得した場合、必ず不動産取得税を支払わなければいけないのでしょうか。この場合、財産分与の中身によって課税されるか否かが変わります。

財産分与には、次の3種類があります。

  1. 清算的財産分与(婚姻中の共有財産の分与)
  2. 扶養的財産分与(離婚後の一方の生活を補うための分与)
  3. 慰謝料的財産分与(精神的な損害に対しての分与)

このうち、1.清算的財産分与については、課税されません。なぜかというと、1.清算的財産分与は、夫婦の実質的共有財産を清算し、妻(または夫)の取得分を確認したにすぎず、実態として財産の移転ではないと考えられるからです。

他方、2.扶養的財産分与と3.慰謝料的財産分与については、夫婦財産の清算にあたらないため課税されます。

このように、財産分与の中身で課税されるか否かが変わってくるので、離婚協議書を作成する際は、財産分与の内容を証明できるようにするのが望ましいでしょう。

登録免許税・固定資産税等

不動産の名義変更の際、登記を受ける者に対して登録免許税がかかります。また、不動産を取得した翌年以降から固定資産税がかかります。また、その不動産が市街化区画内にある場合には都市計画税もあわせて発生します。

税金がかからないようにするポイント!

現金や預貯金で財産分与する

不動産や有価証券などを財産分与する場合には、贈与税や登録免許税などがかかってしまう場合があります。 そのため、財産分与をなるべく現金で行うことをおすすめします。

金額の相当性を明らかにする

何らかの事情があり、分与割合が通常と異なる場合、その多寡により贈与税が発生するおそれがあります。

そのため、財産分与の相当性を法的に説明できるようにしておくことが大事です。

控除制度を活用する

財産分与で税金が課せられた際、財産分与する側・される側が受けられる特例の控除制度を把握しておきましょう。そのうえで、分与する財産の価値・価格や離婚届を提出するタイミングを検討することが大切です。

たとえば、以下のような流れが考えられます。

  1. 分与する財産の現在の価値・価格を調べる
  2. 購入時より価値が下がっている・変わらない場合は、財産分与をする側に税金はかからないため、財産分与の手続を離婚後に行い、財産分与をされる側が配偶者控除を活用する
  3. 購入時より価値が上がっている場合は、財産分与の手続を離婚前に行い、財産分与をする人が譲渡所得税の特別控除や所得軽減税率の特例を活用する

このように、状況に応じて控除制度をうまく活用しましょう。

慰謝料に税金はかかる?

夫婦の一方が浮気やDVなどの原因を作ったことで離婚する場合、「身体的・精神的苦痛」を理由に慰謝料を請求することができます。離婚慰謝料の裁判上の相場は100万円から300万円といわれています。

基本的には、離婚の際に慰謝料を受け取ったとしても課税されることはありません。慰謝料とは、精神的苦痛などに対して支払われる賠償金です。つまり、慰謝料によって利益や贈与を受けたわけではないので、原則として税金はかかりません。

夫婦の一方が浮気やDVなどの原因を作ったことで離婚する場合、「身体的・精神的苦痛」を理由に慰謝料を請求することができます。離婚慰謝料の裁判上の相場は100万円から300万円といわれています。

基本的には、離婚の際に慰謝料を受け取ったとしても課税されることはありません。慰謝料とは、精神的苦痛などに対して支払われる賠償金です。つまり、慰謝料によって利益や贈与を受けたわけではないので、原則として税金はかかりません。

慰謝料に税金がかかるケース

社会通念上相当の金額を超える場合

離婚慰謝料の額があまりに高額で、「社会通念上相当の金額」を超えると判断された場合、「超えた部分の金額」について税金がかかる可能性があります。

「社会通念上相当の金額を超える」とは、一般的な相場の金額を超えるということです。この場合、法的には、精神的苦痛に対する賠償に加え、贈与を受け取ったと考えられるからです。贈与税が課税されると、受け取れる慰謝料が大きく減ってしまいます。相場の何倍もの慰謝料を受け取る場合には、以下について確認しましょう。

・課税対象にあたるか

・どれくらいの税金が発生するか

・いくらであれば課税されないか

これらは、税理士や弁護士へ確認することをおすすめします。

離婚慰謝料を「不動産」でもらう場合

〇不動産を渡す側にかかる税金

不動産を慰謝料として渡す側には、譲渡所得税が発生します。

譲渡所得税とは、不動産を売った際に「発生した利益」にかかる税金のことです。実際には離婚した相手に慰謝料として渡しただけですが、「支払うべきお金(債務)を不動産で支払った」と見なされるため、税務上は売却したという扱いになります。

ただし、譲渡所得税では、非課税控除制度を利用できる可能性があります。

〇不動産を受け取る側にかかる税金

不動産を受け取る側には、不動産所得税と登録免許税が発生します。

不動産を渡す側が、上記の税金を支払うことに合意してくれれば、受け取る側が支払う必要はありません。

不動産以外の資産をもらう場合

株券や宝石、美術品といったものも慰謝料として支払われる場合があります。このようなものに対しては、渡す側に譲渡取得税がかかります。

税金を免れるために行った偽装離婚と判断された場合

財産分与の項目でもお話ししましたが、この場合には、慰謝料として支払われた財産に贈与税がかかります。

養育費に税金はかかる?

養育費は、子どもの扶養のために必要なものであり、原則非課税として扱われます。

養育費に税金がかかるケース

養育費の金額や受け取り方、受け取ったあとの扱い方によっては贈与税の対象と見なされる場合があります。贈与税の対象となるかどうかのラインは、子どもの養育に通常必要な額かどうかです。

「通常認められるもの」の範囲外の場合

相続税法では、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」であれば贈与税を課税しないと定められています。

他方、通常認められるものを超えると、課税される可能性があります。

養育費を一括で受け取る場合

子どもの生活費や教育費として必要とはいえない金額の養育費や、一般的に考えて高額すぎる養育費の贈与を受けた場合、贈与税の課税対象になる可能性があります。

注意したいのは、離婚時に養育費を一括で受け取る場合です。離婚する際、「相手との関わりを断ちたい」、「分割だと支払ってもらえなくなるかもしれない」といった理由で、養育費を一括払いしてもらうこともあると思います。

しかし、本来なら生活費や教育費は、継続的にかかるお金です。「今現在必要でないお金を受け取っている」と税務署に判断されると、贈与税を課税される可能性もあります。

知っておきたい教育資金贈与の非課税制度

教育資金贈与の非課税制度を活用することで、教育資金を一括贈与したとしても、一定の要件のもとに贈与税が非課税となります。

教育資金贈与の非課税制度における「教育資金」には、入学金や授業料など学校へ直接支払う費用のほか、学習塾やスポーツ教室、ピアノなど文化活動を習う教室の費用などが広く含まれます。

教育資金贈与の非課税制度を受けるには、金融機関と一定の契約を締結する必要があるので、単に確定申告のみをすればいいというものではありません。また、贈与を受けている子が30歳に達した時点で教育資金口座に残高が残っていたなど、一定の場合には贈与税の課税対象となります。

本来の用途である「子の養育」以外に使用したとされる場合

養育費として受け取った金銭を、子の養育以外の目的で使用した場合には、税金がかかる可能性があります。

たとえば、以下のようなケースです。

・養育費を貯蓄して住宅を購入した場合

・養育費を元手として資産運用した場合

このうち、資産運用については、NISAなどの非課税制度で運用したとしても、税金がかかるため注意が必要です。NISAなどで非課税となるのは運用益のことであり、贈与税まで非課税となるものではありません。

まとめ

離婚する際、財産分与、慰謝料、養育費など、金銭面についてきちんと事前準備をされる方は多くいらっしゃいますが、他方で、「税」に関する問題は意外と見落としがちです。

今回お話ししたように、事前に課税リスクを把握しておかないと、離婚成立後、高額な税金を支払う必要が出てきて、大きな負担となることもあります。

そのため、特に財産分与などが複雑な場合には、弁護士への相談をおすすめいたします。

(関連記事⇒3月は“離婚シーズン”!? 後悔したくない!離婚するときにやっておくべきこととは?)

アディーレ法律事務所 弁護士 鈴木美穂
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