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はじめに

厚生労働省の統計によると、年間を通じて、3月に離婚する件数が最も多いと報告されています。

子どもの転校手続などから、4月の年度始めに合わせ、3月に離婚する方が多いのでしょう。

今回は、離婚後に後悔しないために、「事前に決めておくべき離婚条件」についてご紹介します。

そして、これまで社会問題となっていた“養育費の不払い”に対して新設された制度により、回収手段が強化されたお話しをします。

特に“養育費の回収”については必読です!今後、相手を“逃げ得”させないためにも、ぜひ参考にしてください。

離婚後の後悔を防ぐために…。事前準備が重要です!

勢い余って離婚したけれど、

  • 何も取り決めせずに離婚してしまった
  • 口約束だけで公正証書を作成しなかった
  • 慰謝料が請求できることを知らなかった、請求しておけばよかった

など、後悔するケースがたくさんあります。

離婚には、新生活のための費用など、さまざまなお金が必要となります。一方で、財産分与や養育費など、離婚によって本来受け取ることができるお金がある場合もあります。

離婚前に、離婚にいくらお金が必要となるか、どんなお金が受け取れるのか、また、子どもに関して決めておくべきことを事前に知っておきましょう。

そして、離婚前に、相手と離婚に関する条件(お金のことや子どものこと)をしっかり話し合いましょう。「離婚後でもいいや」と思っていると、あとから相手と連絡が取れなくなる可能性もあります。

では、実際にどのようなことを決めるべきかご紹介します。

お金に関すること”とは?

養育費

養育費とは、未成年の子どもを養育するために必要な生活費や学費、医療費などにかかる費用で、原則として子どもが成人するまでの間、支払う必要があります。子どもを監護している親は、他方の親から養育費を受け取ることができます。

一般的に、養育費の金額は2人の収入に応じて、家庭裁判所の養育費算定表によって決まります。養育費は、のちのち相手が支払わなくなる可能性が高いものです。ですので、養育費に関して取り決めがされたら、「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成しておくことをおすすめします。ここからは、とある法律について詳しく解説していきます。

養育費の不払い対策!!

離婚後のトラブルとしてとりわけ問題視されているのが、“養育費の不払い”です。

離婚して別居した元夫が養育費を支払わないケースが社会問題となり、多くの専門家からの指摘を受け、ついに、強制手続に関する法である「民事執行法」が改正され、令和2年4月1日より施行されました。

この法改正により、養育費の回収可能性が一段と高くなると期待されています。

養育費が支払われなくなったら、何ができる?

養育費が任意に支払われなくなった場合、相手に対して、民事執行法の規定に基づいて強制執行(相手の財産と差し押さえる、給与を差し押さえるなど)を行うことができます。

対象となる財産の特定

この強制執行をする場合、相手の財産を特定する必要があります。

例えば、相手の預貯金を差し押さえる場合には、相手が有している口座の金融機関名・支店名の特定が必要です。また、相手の給与を差し押さえる場合には、相手の勤務先を特定する必要があります。

従来の法制度では泣き寝入りだった・・・

しかし、従来の法制度では以下のような問題がありました。

  • 相手が、離婚後に新たな口座を作って、その新しい口座へ預貯金を移した場合、新たな口座情報が分からず、養育費の回収ができない…。
  • 相手が、離婚後に転職をしてしまい、新たな転職先が分からず、給与の差し押さえができない…。

せっかく離婚前に公正証書を作成していても、結果的に強制執行を諦め、養育費の支払いを受けられず、泣き寝入りとなるケースが多かったのです。

改正民事執行法のポイント!

そこで、改正民事執行法では、“相手方の財産を特定することが困難”という課題を解決する策が強化されました!

第三者からの情報取得手続

公正証書を持っていても、相手の財産を差し押さえるためには、相手の財産(口座情報、勤務先等)を自分で見つけなければなりませんでした。

そこで、法改正により、第三者からの情報取得手続きが新設されました。これは、裁判所が、市町村や年金機構、金融機関、登記所などに対して情報提供命令ができるというものです。

  • 市町村は、住民税の徴収をするため住民の給与支払者(勤務先)の情報を持っています。また、日本年金機構は厚生年金保険料の徴収をするため、被保険者の給与支払者(勤務先)の情報を持っています。
    そこで、裁判所が市町村や日本年金機構に照会することで、相手の新たな勤務先の情報を調べることができるようになったのです。相手の新たな勤務先が判明すれば、給与の差押えが実現でき、安定した養育費の回収が期待できます。
    また、給与の差押えをする場合、裁判所から相手の勤務先へ差押え命令が届くため、勤務先に養育費の未払いが知られることになり、相手にとっては大きなプレッシャーとなります。
  • 金融機関への照会により、その金融機関での相手の預貯金口座の有無、どの支店に口座を有しているのか、さらには、残高情報も回答してもらえるようになりました。
    相手の口座が特定できれば、その口座を差し押さえ、養育費を回収することができます。
  • ほかにも、例えば登記所への照会により、相手の不動産情報の開示が得られます。

執行力ある債務名義の正本が必要!

これまで「相手の口座がわからない」、「勤務先がわからない」としてあきらめていた場合でも、養育費の回収が期待できるようになりました。ただし、ここで一番重要なのは、この第三者からの情報取得手続を申し立てるためには、「執行力ある債務名義の正本」が必要ということです。
例えば、「そもそも離婚時に何も取り決めをしていない」、「養育費を決めていない」という場合には、強制執行以前の問題として、養育費について取り決めを行う必要があります。
また、離婚時、相手方と単純に離婚条件をまとめただけの任意の書面では、債務名義には該当しないので、公正証書とする必要があります。
債務名義に該当するのは、

  • 確定判決
  • 和解調書
  • 調停調書
  • 強制執行認諾文言付き公正証書

などです。
ですので、養育費が問題となるケースでは、離婚時に「強制執行認諾文言付き公正証書」を作成することをおすすめします。これは、公証役場で作成される公正証書に、「支払いをおこたった場合、強制執行を受けても構いません」という文言が記載されているものを指します。

(関連記事⇒養育費の未払いが解消されるかも?!改正された民事執行法について知ろう!)

財産分与

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を2人で分けるものです。

専業主婦であっても、法律上、婚姻中に夫婦が協力して形成した財産は、名義に関わらず夫婦共有のものと考えられます。具体的には、預貯金・不動産・車・株式・保険の解約返戻金・退職金など、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産といえるものであれば、財産分与の対象となりえます。

離婚前に、どの財産を、どのように分けるのか、決めておくとよいでしょう。この財産分与の請求は、離婚後でも請求可能ですが、離婚成立後2年を過ぎると請求できなくなります。 なお、婚姻前に形成した財産は財産分与の対象外となります。

年金分割

年金分割とは、離婚後2年以内に、配偶者の年金保険料の納付実績のうち、最大2分の1を分割して受け取れる制度です。あくまでも、“将来受け取れる年金が増える”というものですので、すぐに受け取ることはできません。

離婚前であっても、年金分割の話し合いに必要な情報は、「年金分割のための情報通知書」で確認できるので、加入している年金団体に請求して入手しましょう。

慰謝料

相手方の不倫やDVなどが原因で離婚する場合には、相手へ慰謝料を請求することができます。

(関連記事⇒夫の浮気が発覚。慰謝料を請求するためにあなたがすべきことは?)

“子どもに関すること”とは?

親権

子どもの親権をどちらが持つか決めましょう。

子どもの親権は、今までの監護実績(育児の実績)や離婚後に親族の協力が受けられるかなどを参考に、“どちらが親権になるほうが子どもにとって幸せか”などの指標で判断されます。裁判所は、子どもの監護実績の多い妻を親権者と認めるケースが多いです。

面会交流権

面会交流権とは、子どもを直接育てていない親が、離婚後、子どもと会う権利をいいます。

面会については、子どもと会う頻度・会う時間・会う場所・子どもが夏休みなどの休暇中の対応等について、夫婦間で決めておきましょう。

まとめ

離婚は、そのときの感情でそのまま話が進むことが多いですが、シングルマザーになるに際しては、子どものこと、お金のこと、仕事のことなど切実かつ現実的な問題がたくさんあります。

離婚後のトラブルを回避するためにも、特にこれまでお話しした項目について事前に相手とよく話し合い、取り決めをし、適切な書面を作成することが重要です。こと養育費については、法改正もされました。新設された新たな手続きを最大限活用できる書面を作成しておくことをおすすめします。それは、ご自身のためでもあり、愛するお子さんの将来のためでもあるのです。ぜひこのコラムを参考にしていただきながら、後悔のない離婚のために、できる準備を進めてみてはいかがでしょうか。

アディーレ法律事務所 弁護士 鈴木美穂

https://www.adire.jp/profile/suzuki_miho/

日本シングルマザー支援協会より

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