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はじめに
自動車保険に傷害保険、生命保険に火災保険、いろいろな保険に加入されている方も多いと思います。
では、加入されている保険の『特約』をご存じの方は、どのくらいいらっしゃるでしょうか。
本来何かに備えて加入する保険ですが、その何か以外にも顧客のニーズに応じた「特約」が用意されていることがあります。
そこで今回は、日常生活のトラブルにも使える『特約』についてお話ししたいと思います。
『個人賠償責任特約』
(名称は保険会社によって異なります)
個人賠償責任特約とは、日常生活上の不注意によって他人の身体や物に損害を与えて賠償責任を負った場合に保険金が支払われる特約です。
【特徴】
- 保険料は年額2,000円前後が多いです。
- 単独の保険として扱っていることが少なく、傷害保険、火災保険、自動車保険などの特約とされていることが多いです(保険ではないですが、クレジット会社が扱っていることもあり、クレジットカードを作ると加入できます)。
- ご自身だけでなく、家族が起こしたトラブルの賠償もカバーできます(家族の範囲は保険会社によって異なります) 。
- 被害者からの賠償請求に対して、保険会社が代わりに対応してくれる示談交渉サービスが付いているものもあります。
- 支払われる保険金は、選べることが多いですが、1億円または3億円を上限としていることが多いです。
- 使用しても保険料は上がりません。
【支払いの対象】
主に不注意によって他人の身体や物に損害を与えた場合が支払いの対象となりますので、通常、無形財産は対象になりません。
また、他の保険が主にメインとしているケースは支払いの対象にならないことがあります。
たとえば、自動車保険は自動車事故を想定しているため、個人賠償責任特約の対象外です。
詳細は、保険会社によって異なりますのでご確認ください。
以下は、主に支払いの対象になるケース、ならないケースの一例です。
支払いの対象になるケース
- 子どもが友達と遊んでいて誤ってケガをさせてしまった
- 子どもが駐車場に停めてあった他人の車をキズつけてしまった
- 買い物中に子どもが誤って商品を落として壊してしまった
- 自転車に乗っていて、歩行者をはねてケガをさせてしまった
- 散歩中の飼い犬がすれ違った人に噛みついてケガをさせてしまった
支払いの対象にならないケース
- 仕事中の事故
- わざとケガをさせた、他人の物を壊した
- 他人から借りた物を壊してしまった
- SNSで他人を誹謗中傷した
なお、支払いの対象となるケースであっても、保険会社への連絡を怠りますと保険金が支払われないことがあります。保険会社への連絡を忘れないように注意しましょう。
【注意点】
- 他の保険の特約との重複
個人賠償責任特約は、傷害保険、火災保険、自動車保険などの特約とされていることが多いため、複数の保険に入っていると重複して加入してしまうおそれがあります。仮に2社で入っていても支払われる保険金の合計額は賠償額までとなり、2倍になるわけではありませんのでご注意ください(ただし、1社で賠償金を賄えない場合は有用)。 - 自転車保険との関係
個人賠償責任特約では、通常、自転車事故の賠償金も支払われます。この点は自転車保険と同様ですが、自転車保険では自身のケガの治療費等も補償の範囲に含まれている点が大きな違いです。その分、保険料が高額ですので、補償の範囲を理解して加入する必要があります。
地域によって自転車に乗る際、自転車保険等の加入を義務付けています。ただし、本コラム掲載時点(2023年11月時点)で未加入の場合の罰則はありません。
なお、義務とされる保険は、他人の生命または身体を害した場合の損害賠償とされており、「個人賠償責任特約」でもよいとされています。 - メインの保険を解約するとどうなる?
保険の特約として加入している場合は、当該保険を解約すると自動的に個人賠償責任特約も解約となってしまいます。
『弁護士費用特約』
弁護士費用特約とは、自動車事故や日常生活における事故で被害者になった場合に、損害賠償請求を弁護士に委任する際にかかる弁護士費用等を補償する特約です。
【特徴】
- 保険料は年額2,000円前後が多いです。
- 主に自動車保険に付帯して加入できますが、その他の保険でも特約として設けられるケースが増えてきています。
- ご自身だけでなく、同居の家族や自動車の同乗者も利用できることが多いです。
- 弁護士費用特約は、ご自身等が被害者となった場合に、損害賠償請求する際に専門的知識が乏しい等の理由で弁護士に依頼する際の弁護士費用等を補償するものです。つまり、通常の保険とは立場が逆の場合に利用する特約です。
- 補償される金額は、300万円を上限としていることが多いです。
- 使用しても保険料は上がりません。
【支払いの対象】
自動車保険の場合、自動車事故全般で使用できますが、その他日常生活については保険会社により異なりますので、詳細は保険会社にご確認ください。以下は、主に支払いの対象になるケースの一例です。
- 歩行中に自転車にぶつけられ、ケガをした
- バックが盗難にあった
- マンションの上の階から水漏れした
- 他人が飼っている犬に噛まれてケガをした
【注意点】
- 自動車保険の特約として加入する場合
自動車保険の特約として登場した経緯があるため、主に自動車事故に限定されていました。日常生活のトラブルにも対応するためには、日常生活もカバーした弁護士費用特約を選択する必要があります。 - 弁護士保険
特約として加入する弁護士費用特約は、適用可能な場面が限定的なことが多いです。幅広いトラブルの弁護士費用を補償するためには弁護士保険があり、こちらは加害者の場合も対象となります。ただし、年間の保険料は数万円となることが多く、弁護士費用特約よりも高額になります。
まとめ
日常生活を平和に送ることは誰でも望むことですが、時として予期しないトラブルに巻き込まれてしまうこともあるでしょう。
そのようなとき、起こしてしまったトラブルに対応できる特約があれば、安心して生活を送れるでしょう。
ご紹介したように、日常生活におけるトラブルに使える特約が存在しているため、せっかく保険に入っているのであれば、「特約」についても一度確認し、必要と思われる方は追加されてはいかがでしょうか。
アディーレ法律事務所 弁護士 坂巻佑馬
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