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はじめに
子どもの将来を案じるシングルマザーにとって、自分の老後について考える余裕がない、というのが現実ではないでしょうか。
仕事や育児に追われる日々のなかで、将来に不安を抱えている方も多いはずです。
そんなシングルマザーの老後の備えとして知っておいていただきたいのが「成年後見制度」です。
これは、判断能力が低下した場合に備え、財産管理などを代理で行ってくれる人を決めておく、あるいは、必要になった際に裁判所が選任してくれる制度です。
本コラムでは、シングルマザーが安心して老後を迎えられるよう、成年後見制度について解説します。
将来に対する不安を軽減し、より穏やかな日々を送る準備を始めましょう。
なぜシングルマザーにとって成年後見制度が重要なのか
シングルマザーが子どもの成長を支えながら、生活の全てを一人で担う責任は計り知れません。 同時に、自分自身の健康管理や老後の将来設計についても真剣に向き合わなければなりません。
特に、高齢になって認知症になった場合だけでなく、病気や不慮の事故で判断能力が低下した場合のリスクは、シングルマザーにとってより深刻です。
たとえば、財産の管理や医療行為や介護を受ける際の契約など、意思決定に必要な判断能力が不十分になる可能性があります。
さらに、その時点でお子さんが未成年であれば、誰が親代わりとなって養育や教育の責任を負うのか、という問題も発生します。
頼れる親族が近くにいれば安心ですが、そうでない場合は、お子さんの将来が不安定になるリスクもあるでしょう。
また、元気なうちに将来の希望を明確に伝えることで、自身の意思を尊重した生活支援や介護を受けることも可能です。
シングルマザーだからこそ、成年後見制度について理解を深め、早めの準備を始めることが大切です。
成年後見制度とは何か
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分になった方のために、財産管理や日常生活における様々な行為を支援する制度です。
大きく分けて「法定後見制度」と「任意後見制度」の2種類があります。
それぞれの特徴は次のとおりです。
| 制度 | 対象 | 後見人の決定 | 開始時期 |
| 法定後見 | 既に判断能力が低下している方 | 家庭裁判所 | 家庭裁判所の審判後 |
| 任意後見 | 十分な判断能力がある方 | 本人 | 本人の判断能力が不十分になったあと(家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時) |
なお、法定後見制度は判断能力の程度に応じて次の3つに分けられています。
- 成年後見(本人の判断能力が欠けている場合)
- 保佐(本人の判断能力が著しく不十分な場合)
- 保佐(本人の判断能力が著しく不十分な場合)
どの制度が自分に合っているのか、専門家(弁護士、司法書士など)に相談してみるのも良いでしょう。
参考:成年後見制度・成年後見登記制度|法務省
任意後見制度について
認知症などで判断能力が低下した場合に備え、元気なうちに自分で後見人を選んでおくのが「任意後見制度」です。
公正証書を作成して契約を締結し、将来の後見事務の内容(財産管理や身上監護など)を具体的に決めておきます。
たとえば、介護サービスの利用契約、医療行為への同意、その他の財産管理などです。
任意後見制度のメリットは、本人の意思を尊重した老後設計が可能になる点です。
手続きの流れとしては、まず任意後見受任者を選び、公証役場で任意後見契約の公正証書を作成します。
そして、本人の判断能力が低下した際には、本人等からの申立てにより家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見が開始されます。
(任意後見の開始により、任意後見受任者が任意後見人となり、任意後見監督人が任意後見人を監督します。)
法定後見制度について
すでに判断能力が低下している場合に利用するのが「法定後見制度」です。
認知症、知的障害、精神障害などにより、自分で財産管理や生活に関する重要な決定をすることが難しくなった方を守るための制度で、家庭裁判所が、本人にとって適切な後見人(※)を選任します。
※それぞれ、成年後見人、保佐人、補助人といいます。
前述のとおり、法定後見制度は判断能力の程度に応じて「成年後見」「保佐」「補助」の3つに分けられており、主な違いは次の表のとおりです。
| 類型 | 判断能力の状態 | 代理権の範囲 |
| 成年後見 | 欠けているのが通常の状態 | 財産に関するすべての法律行為 |
| 保佐 | 著しく不十分 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
| 補助 | 不十分 | 申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
法定後見開始の申立てができる人は、次のとおりです。
- 本人
- 配偶者
- 四親等内の親族
- 検察官
- 市区町村長 など
シングルマザーが成年後見制度を活用する際の注意点
シングルマザーが成年後見制度の活用を検討する際の注意点は、まず、ご自身の状況や将来の希望を明確にすることです。どのような生活を送りたいか、子どもに何を残したいか、などを具体的に考えてみましょう。
任意後見契約を活用する際は、将来の希望を具体的に記載し、定期的な見直しを行いましょう。
曖昧な表現は避け、財産管理や日常の事務に関する内容を明確に定めることが重要です。
法定後見制度を利用する場合は、家庭裁判所が選任した後見人としっかりコミュニケーションを取り、後見事務の内容や状況を把握するようにしましょう。
いずれの場合も、事前に弁護士や司法書士などの専門家に相談することがおすすめです。
専門家の客観的なアドバイスを受けることで、より適切な制度活用が可能になるでしょう。
まとめ
将来の不安を軽減し、高齢になっても子どもに心配をかけずに生活していくために、成年後見制度はシングルマザーにとっても有効な手段となり得ます。
任意後見制度、法定後見制度、それぞれについてきちんと理解し、ご自身の状況に合った制度を選択することが重要です。
子どもと安心して暮らせる未来のために、今から成年後見制度について考えておきませんか?
アディーレ法律事務所神戸支店 弁護士 神野由貴
https://www.official.adire.jp/profile/kanno_yuki/
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