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- 1. はじめに
- 2. 「いじめ」を法律の観点から見るとどうなる?
- 3. 「いじめ防止対策推進法」とは?
- 3.1. いじめ防止対策推進法とは?
- 3.2. 法律上の「いじめ」とは?
- 3.3. 学校はどんな義務を負うの?
- 3.3.1. 学校の実情に応じた、「学校いじめ防止基本方針」の策定(同法第13条)
- 3.3.2. 基本的施策の充実
- 3.3.3. 複数の教職員、心理・福祉等の専門家などにより構成される、常設の「学校いじめ対策組織」の設置(同法第22条)。
- 3.3.4. いじめに対する措置(同法第23条)
- 3.3.5. 重大事態への対処(同法第28条)
- 3.4. 親の責任は?
- 3.5. いじめた子どもや、義務を怠った学校への罰則は?
- 4. 「いじめ」に悩んだときの相談先は?
- 4.1. 24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
- 4.2. 子どもの人権110番(法務局)
- 4.3. インターネット人権相談(法務局)
- 4.4. 弁護士会による相談窓口
- 4.5. 東京都いじめ相談ホットライン
- 4.6. SOSミニレター(法務省)
- 4.7. NPO法人チャイルドライン支援センター
- 4.8. 各都道府県警察の少年相談窓口
- 5. まとめ
- 6. 関連動画
- 7. 日本シングルマザー支援協会より
はじめに
みなさんも「我が子がいじめの被害者、加害者になってしまったらどうしよう」と一度は考えたことがあるのではないでしょうか。すべての子どもは複雑な背景を持っており、いじめは、「どの子どもにも、どの学校においても起こりえる問題」とされています。
2019年度の小中高校におけるいじめ認知件数は過去最多の61万2,496件、このなかで命の危険や不登校に繋がった疑いのある「重大事態」も最多の723件となり、13年度以降増加しています。また、小中高生の自殺は、2020年は479人にものぼり、過去最多となってしまいました。痛ましい事件は後を絶たず、コロナ禍により子どもが受けている強いストレスや不安などの負担が、さらなるいじめに繋がる危険性も指摘されるなど、いじめ問題は深刻な状況が続いています。
教育や心理ケアだけではなく、いじめ問題には法的なアプローチもあります。今回は、自分の子どもがいじめに遭ってしまったときにどのように子どもを守ることができるのか、どのような法的手段を取ることができるのかを考えます。
「いじめ」を法律の観点から見るとどうなる?
いじめに関する法律は、大きく3つあります。
1つめは、民法です。いじめは、故意に被害者の権利を害したり、身体的・精神的に苦痛を与える行為ですから、不法行為として、加害者等に対して損害賠償請求できる可能性があります(民法第709条等)。
2つめが、刑法をはじめとした刑罰法規です。
子ども社会でのいじめというと、被害者が受けた重大な被害に比べて軽く聞こえてしまうことがありますが、いじめは「犯罪」になる場合があります。
- 傷害罪(刑法第204条)
殴る、蹴るなどの暴行によりケガを負わせる。 - 暴行罪(刑法第208条)
水をかける。物を投げて脅かす。ケガをしない程度に叩いたり、蹴る。 - 強要罪(刑法第223条)
脅して無理矢理土下座させる。「引き受けないと叩くぞ」と脅して掃除当番を押しつける。 - 強制わいせつ罪(刑法第176条)
脅して性的いやがらせをする。 - 恐喝罪(刑法第249条)
脅して金品をたかる。 - 脅迫罪(刑法第222条)
学校に来たら危害を加えると脅す。 - 逮捕監禁罪(刑法第220条)
倉庫や教室に閉じ込める。 - 器物損壊罪(刑法第261条)
ノートを破る。私物を捨てる。 - 窃盗罪(刑法第235条)
靴を盗む。 - 侮辱罪(刑法第231条)・名誉毀損罪(刑法第230条)
ネット(SNS)上で悪口を書く(特定少人数でのグループ内でのやり取りでも、不特定多数に伝播する可能性がある場合は成立することがあります)。 - 児童ポルノ提供等(児童買春・児童ポルノ禁止法第7条)
スマホ等で撮影した性的な写真をネットに掲載する。
これらは一例にすぎませんが、よく起こりがちないじめも犯罪になりえることがわかります。いじめは被害者を深く傷つけ、長時間にわたって心身に悪影響をおよぼす可能性があるだけでなく、警察の捜査対象になりえる重大な行為であり、決して許されない根絶すべき問題だと改めて認識することが大切です。
そして、いじめに関する3つめの法律が、「いじめ防止対策推進法」です。
「いじめ防止対策推進法」とは?
いじめ防止対策推進法とは?
いじめ防止対策推進法は、2011年に大津市で起きたいじめ自殺事件を契機として、学校に在籍する児童・生徒のいじめを防止するために制定された法律です。
きっかけとなった大津市のいじめ自殺事件では、学校側がいじめに気づいていながらそれに対処しなかったこと、「自殺の原因はいじめではなく家庭環境の問題」などと責任逃れを図ったことなどから厳しく批判されました。
いじめ防止対策推進法では、いじめ防止対策の基本理念、いじめの禁止、学校や関係者が負うべき責務が定められています。
法律上の「いじめ」とは?
この法律では、「いじめ」とは、被害者である児童生徒と一定の人間関係のあるほかの児童生徒が行う心理的または物理的な影響を与える行為で、被害者が心身の苦痛を感じているものと定義されています。
被害者と加害者にパワーバランスの差があるか、継続性があるか、一方的か、いじめがされた場所が学校内外か(インターネットも含む)、被害の程度などを問わず、「被害者の被害性」が判断の中心とされ、幅広くいじめを認知することが求められていることがポイントです。
加害者は、「ふざけて遊んでいるつもりだった」、「相手が悪い」、「みんなやっている」、「やらないと自分がやられる」などと言うこともありますが、被害者が苦痛に感じる行為をしていれば、それは「いじめ」です。
反対に、「親に心配をかけたくない」、「いじめを受けていると認めたくない」、「仕返しが怖い」などさまざまな心情から、被害者自身がいじめを否定してしまうこともありますが心身の苦痛を感じさせる行為があれば、それはいじめだと評価しうる、ということでもあります。
学校はどんな義務を負うの?
学校は、いじめの防止と早期発見、いじめと思われる事案に適切かつ迅速な対処をする責務が課せられ(同法第8条)、実効性を担保するために、次のようなさまざまな義務が求められています。
学校の実情に応じた、「学校いじめ防止基本方針」の策定(同法第13条)
基本的施策の充実
a 道徳教育等の充実(同法第15条)
b 定期調査などのいじめ早期発見のための措置、相談体制の整備(同法第16条)
c ネットいじめに対する啓発活動(同法第19条)
複数の教職員、心理・福祉等の専門家などにより構成される、常設の「学校いじめ対策組織」の設置(同法第22条)。
いじめの防止、早期発見、いじめ事案の対処など、いじめの認知から調査・対処までの中心を担う組織であり、教職員のみならず、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、弁護士、医師、警察官などの外部専門家を含んでいます。
いじめに対する措置(同法第23条)
いじめの通報を受けたときは、速やかに事実確認を行う措置を講じて結果報告を行うこと
- 専門家の助力を受けながら、被害者やその保護者に対する支援、加害者への指導やその保護者への助言、被害者が安心して教育を受けられるようにする措置を講じること
- 情報共有、犯罪事案では所轄警察署と連携すること
などが定められています。
重大事態への対処(同法第28条)
いじめにより被害者の生命、身体または財産に重大な被害が生じた疑いがあるとき、またはいじめにより、被害者が相当の期間欠席を余儀なくされている疑いがあるときを「重大事態」といい、別途文科省等のガイドラインにも沿った迅速な対応が求められます。
親の責任は?
親は、子どもの教育について第一義的責任を負っており、子どもがいじめをすることがないよう、子どもに対する指導を行うよう努力する義務と、子どもがいじめを受けた場合には、子どもを保護する義務があるとされています(同法第9条)。
そして、国や学校等による措置に協力するよう努力する義務があり、親は、子どもからいじめに関する相談を受け、いじめがあると思われるときは、被害者が在籍する学校への通報など適切な措置を取るよう定められています(同法第23条)。
いじめた子どもや、義務を怠った学校への罰則は?
いじめ防止対策推進法では、いじめ加害者の罰則は設けられていません(罰則ではなく、被害者が安心して教育を受ける環境を作るために必要な場合は、加害者の出席停止などの措置は可能と定められています)。
しかし、最初に述べたとおり、いじめの被害を受けた場合、民事では損害賠償請求ができる可能性があります。なお、学校側の対応が不十分だった場合は、学校側に対し、学校が児童生徒の安全に配慮する義務を怠ったとして、損害賠償請求を行うことも可能です。
また、いじめが犯罪に該当するケースでは、警察の捜査対象となり、加害者が20歳未満であれば、少年事件として家裁送致、観護措置、調査、審判、保護処分(保護観察、児童自立支援施設または児童養護施設送致、少年院送致)を受けることがあります。ただし、14歳以上であれば正式裁判で刑罰を科すことが法的に可能になるため、大人と同じように、懲役などの刑罰が科される可能性もあります。
(関連記事⇒自分や子どもの行動がきっかけで、事故・トラブルを起こしてしまったら)
「いじめ」に悩んだときの相談先は?
このように法律はだんだん整備されてきたものの、いまだにいじめはなくなっていません。もし、いじめにあってしまった場合、親や子ども本人はどこに相談すればよいのでしょうか。
もちろん私たち弁護士にもいじめ問題に取り組む人はたくさんいますが、いじめを認めることは子ども本人にとって非常に負担が大きく、いじめを受けていることを隠してしまうことも多いため、なかなか相談にまで至らないこともあると思います。
いじめから抜け出す方法は必ずあります。親や学校・教師などに限らず、秘密を守ってくれて安心、相談料無料ですぐ相談できる場所もたくさんありますので、その一部をご紹介します。
24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
いじめ問題やその他のSOS全般に悩む子どもや保護者等が、いつでも相談機関に相談できるよう、都道府県および指定都市教育委員会が夜間・休日を含めて24時間対応可能な体制を整備。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
子どもの人権110番(法務局)
法務局の職員や人権擁護委員による相談。相談をきっかけに、調査や救済措置が講じられるケースもあります。
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken112.html
インターネット人権相談(法務局)
電話での相談が難しい場合でも、HPの相談フォームに氏名、住所、年齢、相談内容等を記入して送信すると、後日メール、電話、面談にて回答してもらえます。
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken113.html
弁護士会による相談窓口
相談無料、氏名は名乗らなくてもOK。秘密厳守です。
https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/other/child.html
また、東京弁護士会「子どもの人権110番」の場合は、子どもの人権に関するすべての事柄を扱っています。電話相談無料。
https://www.toben.or.jp/bengoshi/center/tel/children.html
東京都いじめ相談ホットライン
幼児から高校生相当年齢の方を対象に、いじめに関する相談を24時間受付中。
https://e-sodan.metro.tokyo.lg.jp/tel/hotline/index.html
SOSミニレター(法務省)
裏面の封筒部分を切り取り、便せん部分を入れてポストに投函すると、最寄りの法務局・地方法務局に届きます。切手を貼る必要はありません。
http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00013.html
NPO法人チャイルドライン支援センター
電話、チャット、つぶやきによる子ども専用相談窓口です。相談無料で、名乗る必要はありません。
各都道府県警察の少年相談窓口
犯罪になりえるときは、各都道府県警察の少年相談窓口に相談する方法もあります。
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/syonen/soudan.html
まとめ
いじめは重大な人権侵害であり、絶対に許されない行為です。被害を最小限にとどめ、いじめをなくし、子どもが心身ともに健やかに育つための安心できる学校環境を整えるためには、いじめの早期発見、迅速かつ適切な対応が必要不可欠です。今回お話したとおり、法律では学校側も解決に向けた組織的対応をすることが定められていますので、お住まいの都道府県、市町村等が定めたいじめ対応方針・マニュアルも確認し、学校側に相談のうえ、対応を求めましょう。
子どもの心身を守ることがもっとも重要であり、学校側だけでなくご家庭や地域をはじめとしたすべての大人が協力していじめを解決すべきです。学校が解決に動いてくれず事態が改善しないときは、早めに学校以外の相談窓口もご利用いただければと思います。
アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/
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日本シングルマザー支援協会より
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