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養育費の未払いと民事執行法ってどういう関係があるの?

シングルマザーにとって、離婚した相手から養育費を受け取ることができるかどうかは、子供を育てる上でとても重要な問題ですよね。

離婚するだけでも大変なのに、子供のために時間をかけ、神経をすり減らしながら養育費の取り決めをしたのに、相手がきちんと養育費を払ってくれないなんて・・・!大問題です!

実際、シングルマザーのうち、離婚時に相手から受け取る養育費についてきちんと取り決めをした人は全体のうち約43%(厚生労働省HP「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」のうち平成28年調査)、さらにきちんと養育費を受け取ることができている人は約24%(同平成28年調査)です。

養育費を決めていたのに支払ってもらえないとき、単なる口約束や当事者同士で作成した文書しかない場合には、相手方へ直接連絡して請求するしかありません。

一方、養育費を執行証書(支払を怠ったときは直ちに強制執行されることを債務者が承諾する旨の記載がある公正証書のこと)や調停調書、審判書などで定めている場合(「債務名義」がある場合)には、裁判所を通して相手方の預貯金や給与を差し押さえるなどの方法(「強制執行」)をとることができます。

その強制執行について定めている法律が「民事執行法」です。民事執行法が改正され、強制執行を行いやすくなるということは、つまり、未払いの養育費を相手に払わせることが容易になったり、差押えなどを恐れて相手が自ら養育費を払ってくれるようになったりするという効果が期待できるのです。

※「債務名義」とは、強制執行によって実現されるべき内容が記載されている文書のこと。民事執行法上、この債務名義があれば強制執行できることとされている。確定判決、和解調書、調停調書、執行証書、仮執行宣言付判決など。

 

改正でどう変わったの?

では、民事執行法はどう変わったのでしょうか。

ポイントは4つです。

  1. 債務名義を持っていれば、誰でも財産開示手続を申し立てることができる
  2. 財産開示手続において、債務者の不出頭などに対する罰則を強化した
  3. 銀行等の金融機関から債務者の預貯金等の情報を得ることができる
  4. 債務者の不動産情報や勤務先などの情報を得ることができる

それぞれを具体的に見てみましょう。

財産開示手続って何?

執行証書や調停調書などの債務名義を有している場合、相手方の財産を差し押さえるなど、相手から強制的に金銭を回収するための強制執行を裁判所に申し立てることができます。

ただ、相手の財産を差し押さえる場合には、自分で差し押さえる財産を見つけて特定しなければなりません。

たとえば、預貯金の差押えは、金融機関名だけではなく、店舗等の特定も必要です(ただし例外もあります)。

給与を差し押さえるには、相手の勤務先の名称、所在地などの特定が必要です。

相手が不動産を所有している場合、その不動産を競売にかけるには、不動産の所在、番地等を特定する必要があります。

 

離婚後は、相手の状況を知ることが難しく、相手が預貯金口座を変えたり、勤務先を変えたりした場合、それを探すことは大変ですよね。

そのような場合に、相手を裁判所に呼び出し裁判官の前で自分の財産を明らかにさせる「財産開示手続」という制度があります。

この制度自体は改正前もありましたが、年間に1000件前後の利用しかなく、もっと実効性のある制度にするため今回の改正の対象となりました。

 

これまでは、財産開示手続を使うことができるのは確定判決等を有している人に限定されていたのですが、範囲を拡大して、養育費の取り決めを執行証書でした人も、財産開示手続を申し立てることができるようになりました(ポイント1)。

 

また、財産開示手続の期日に相手が裁判所に出頭しない、あるいは、保有する財産について裁判官の前で嘘を言った場合には、刑事罰(6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金)が科されることになりました。

これまでは30万円以下の過料という行政罰だったことからすると、罰則がとても重くなりました(刑事罰は前科になります)。

罰則を重くして、財産開示手続にきちんと出頭させ、真実の財産を明らかにさせることがねらいです(ポイント2)。

金融機関から相手の預貯金を教えてもらうことができる

調停調書や執行証書などの債務名義を持っている人は、裁判所に対し、相手の所有する財産の情報を取得するための申し立てができるようになりました。預貯金等については、裁判所が銀行などの金融機関に情報(預貯金の有無、取扱店舗、預金の種類、残高等)の提供を命じ、金融機関が裁判所に情報を提供します。

預貯金等の情報に関しては、「財産開示手続」を行わなくても取得の申立てが可能です(ポイント3)。

相手の所有する不動産や相手の勤務先も教えてもらうことができる

さらに、今回の改正で、相手の所有する不動産の情報および勤務先の情報を得られるようになりました。

不動産の情報については、裁判所は登記所に情報の提供を命じます。

また、勤務先の情報は、市町村や年金機構等に情報の提供を命じます(ポイント4)。

 

なお、不動産および勤務先の情報取得については、預貯金の場合と異なり、「財産開示手続」を先に行っておかなければなりません。

また、勤務先の情報については、「養育費の支払い」や「生命又は身体の侵害による損害賠償金の支払い」を内容とする場合に限られています。

 

養育費を確実に受け取るために・・・

離婚のときには養育費の取り決めをしなかった場合でも、後に養育費の取り決めを行うことができます。

また、これから養育費の取り決めを行う場合でも、すでに養育費の取り決めを行っている場合でも、未払いがある場合には、改正された民事執行法の対象になります。

 

そのため、これから養育費の取り決めをする場合には、できれば、養育費は、調停や執行証書で定めておくのが良いと思います。

一方、すでに養育費を定めてはいるけれど、口頭や当事者だけで作成した書面などしかない場合で、養育費の支払いが滞っている場合は、その内容で新たに調停をして調停調書を作成するか、あるいは、執行証書を作成して、いつでも強制執行をできるようにしておくと安心かもしれませんね。

なお、養育費にも時効があるのでご注意ください。
(⇒関連記事:約束したはずの養育費が振り込まれなかったら

 

まとめ

養育費が未払いなのに相手の情報が得られず回収が難しかったものも、民事執行法の改正により、相手方の情報を得られやすくなり、泣き寝入りせずに済む可能性が大きくなりました。

改正された民事執行法は、不動産に関する情報を取得する手続を除き、令和2年4月1日から施行されました。

子供たちの将来のためにある養育費ですから、もし、未払いがある場合には早めに弁護士や家庭裁判所などに相談してくださいね。

アディーレ法律事務所 弁護士 大西亜希子
https://www.adire.jp/profile/onishi_akiko/

 

日本シングルマザー支援協会より

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