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はじめに

離婚時に養育費について取り決めをしても、「コロナ禍で収入が減った」「再婚して家族が増えた」などの理由で、元夫から養育費の減額を求められることがあります。

話し合って決めたことなので納得しがたく、減額されたくないのが本音ではありますが、養育費の減額を請求されたら応じなければならないのでしょうか。

今回は、

  • そもそも一度決めた養育費の減額は認められるのか
  • 一方的に養育費を減額された場合の対処法
  • 減額請求の流れ

についてご紹介します。

そもそも養育費の減額は認められるのか?

まず、お互いに合意の上で取り決めた養育費であっても、再度話し合って減額することは問題ありません。

また、減額に合意できなくとも、状況次第では裁判所の判断で減額が認められてしまう可能性があります。

そもそも養育費を決める際の基準には、①養育費を支払う者の年収、②親権を持つ者の年収、③子どもの年齢、④子どもの人数などがあります。

しかし、養育費は長期間にわたって支払うことが多いため、生活状況や経済状況など、お互いを取り巻く状況が変化することはままあり、“合意した当時予測できなかった事情の変更”が生じたときは、養育費の減額や増額が認められる場合があります。

“合意した当時予測できなかった事情の変更”とは、例えば、お互いまたは片方に、収入の増減、大きな病気やケガ、家庭環境の変化(再婚、養子縁組、新たな子どもの出生などにより扶養家族が増えた)、教育費の増減(進学など)があったときや、物価の大幅な変動・貨幣価値の変動が起こったときなどです。

したがって、元夫から養育費をもらっていても、例えば、

  • 元夫が、大きな病気やケガなどによってやむを得ず働けなくなり、収入が大幅に減少した
  • 元夫が再婚、新しい子どもの出生、再婚相手の子どもとの養子縁組などにより、元夫の扶養家族が増えた
  • こちらが再婚をして、再婚相手と子どもが養子縁組をした
  • こちらの収入が大幅に増えた

など、”合意した当時に予想できなかった事情の変更”があると認められた場合、養育費が減額されてしまう可能性があります。
 
ただし、これらの事情が生じるであろうことを見込んで養育費を取り決めていた場合や、裁判所で認められる相場よりも安い金額の取り決めをしていた場合など、減額が認められにくいと考えられるケースもあります。

一方的に減額されたらどうする?

後ほど詳しくご紹介しますが、減額するには、①協議→②調停→③審判というプロセスをたどる必要があり、減額にお互いが合意するか、裁判所が減額するという判断をしない限り、元夫が一方的に養育費を減額することはできません。

ですが、養育費の不払いを経験されている方も現実にはかなり多くいらっしゃいます。

もし、減額の話し合いがまとまらず、元夫が勝手に養育費を減らしたり、全く支払いがされなくなってしまったときはどうすればよいのでしょうか。

元夫が定められた養育費を払わないときは、次の4つの手段をとることができます。

履行勧告

調停や審判で養育費を決めた場合、強制執行の前段階として、家庭裁判所から履行勧告をしてもらうことができます。

手数料がかからない点ではお得ですが、あくまで説得や勧告にすぎず、強制力がありません。

履行命令

履行勧告と同じく、家庭裁判所から履行命令を命じる審判をするもので、履行命令に従わないと10万円以下の過料に処することができますが、あくまで相手方の自発的な支払いを促すものにすぎません。

間接強制

これは、養育費を払うまでの間、養育費とは別に間接強制金の支払いを課して、相手に心理的圧迫を加える方法もあります。

ただし、自発的に養育費を払わない者は、間接強制金の支払いにも自発的には応じにくいですし、間接強制金の回収は、別途強制執行の手続きをしなければいけないというデメリットもあります。

強制執行

債務名義(判決書、和解調書、公正証書〈強制執行認諾文言付〉、調停調書、審判調書など)があり、強制執行で差し押さえる相手の財産の特定(不動産、自動車、給与、預貯金、保険解約返戻金など)ができる場合は、強制執行により相手の財産を差し押さえることが可能です。

(関連記事 ⇒ 養育費の未払いが解消されるかも?!改正された民事執行法について知ろう! )

養育費減額の手続き・流れ

先に述べた通り、養育費の減額は勝手に行うことは認められません。ではどのような手続きが必要か具体的に見てみましょう。

① 協議

まずは元夫と減額について話し合います。

減額の理由を具体的に明らかにしてもらいましょう(資料なども確認しましょう)。

お互いに納得して合意した場合は、減額が可能です。費用はかかりますが、合意内容は、公証役場で公正証書(強制執行認諾文言付)にしておきましょう。

公証人という専門家が作成する公正証書は、信用性が高く「言った、言わない」のトラブルを防止できますし、万一、将来不払いになってしまっても、スムーズに強制執行に移行することが可能です。

一度減額に合意してしまうと、再度の事情変更が認められなければ、養育費の増減額ができなくなります。

後悔しないよう、減額や相手の主張が法的に妥当なものか、合意する前に専門家に相談することをおすすめします。

② 家裁の養育費減額調停

当事者の話し合いでは合意に至らない場合は、元夫から「養育費減額調停」を申し立てられる可能性があります。

このときは、家庭裁判所の調停で、調停委員を介して、元夫と話し合いをすることになります。

この調停で合意に至れば減額が可能です。

調停を起こされたことが納得いかず、欠席しようと思う方もおられるかもしれません。

出席をしないと調停は不成立となりますが、相手の主張に有利な内容での審判がされてしまう危険性がありますので、きちんと対応することが大切です。

③ 家裁の審判

調停での話し合いでも合意に至らない場合は、これまでの双方の主張や提出資料をもとに裁判所が最終判断をします。

(関連記事⇒養育費をきちんと受け取れる人はなんと3割以下!「公正証書」で未払いを回避しよう)

まとめ

養育費は、子どもと一緒に暮らしているかどうかにかかわらず、子どもの父親・母親としての最も大切な責任の一つですが、子どもと会う機会の減少や再婚などにより、「ちゃんと養育費を支払おう」という気持ちが薄れてしまうことはまま見られます。

減額の要求に良い気持ちはしないほうが多いでしょうし、不当な減額要求には応じる必要はありませんが、今回ご紹介したとおり、場合によっては減額を受け入れなければならない場合もあります。

養育費の取り決めや増減額のトラブルは、判断が難しいところがありますので、お早めに専門家へのご相談をおすすめします。

正しい情報をもとに、子どもやお互いにとって一番よい選択ができるとよいですね。

アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/

日本シングルマザー支援協会より

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