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はじめに

毎年、11月12日~25日までの2週間にわたり、内閣府が中心となって「女性に対する暴力をなくす運動」を実施しています。

性犯罪・性暴力、ストーカー行為、セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)など、身の回りには女性の人権を侵害するさまざまな暴力がありますが、夫婦間の暴力の代表がDVです。

令和元年度司法統計によれば、妻の離婚動機として、「(夫が)暴力を振るう」「(夫が)精神的に虐待する」は、「性格が合わない」「生活費を渡さない」に次いで多く、いかに多くの人がDVに悩んでいるかが分かりますよね。

今は被害に遭っていなくとも、将来的に夫や恋人、再婚相手との間で直面してしまうかもしれない身近な問題です。

今回は、夫から暴力を受けてしまった場合の対処法をご紹介します。

 

DVとは?

犯罪にもなりえる重大な人権侵害「DV」(Domestic Violence)は、直訳すると「家庭内暴力」を意味し、日本では「配偶者や恋人など親密な関係にある、または過去に親密な関係であった者から振るわれる暴力」という意味で使われることが多いと思います。

 

DVは今に始まった問題ではありませんが、「夫婦げんかは犬も食わない」ということわざがあるように、長らく軽視されてきました。

2001年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(通称「DV防止法」)が成立しましたが、この法律では、婚姻関係にある男女間はもちろん、離婚後や事実婚、同棲中の男女間での暴力も広く保護の対象としています(暴力にはさまざまな種類があるので、後述します)。

 

DVと聞くと、夫から妻への暴力をイメージされるかもしれませんね。確かに、警視庁のデータによると、令和元年のDV被害の相談は、女性からの相談が6,775件(80.3%)、男性からの相談が1,660件(19.7%)と、女性が被害者になってしまうケースが圧倒的に多いです。

しかし、令和元年度司法統計の夫側の離婚動機を見てみると、「(妻が)暴力を振るう」が1,496件(9.0%)、「(妻が)精神的に虐待する」が3,326件(20.1%)と、妻から夫に対するDVも決して少ない数とは言えません。

 

もちろん、これらの訴えがすべてDVに該当するとは限りませんが、データの数字は現実に起きている被害の氷山の一角にすぎないことを考えると、被害者にも加害者になってしまうことのないよう、DVを正しく理解することが大切だと思います。

 

DVの種類

みなさんは「DV」と聞いて、何を思い浮かべますか?
DV防止法では、「配偶者からの暴力」を

  • 配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの)
  • これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動

と定義していますが、DVは重大な人権侵害となる、いろいろな種類の暴力を含む概念です。

ここではひとつの分類例として、次の5種類をご説明します。

  1. 身体的暴力
    殴る、蹴る、平手で叩く、引きずり回す、物を投げつける、首をしめる、刃物を突きつけるなど、暴行罪(刑法第208条)や傷害罪(刑法第204条)になりえる行為。
  2. 精神的・心理的暴力
    大声でどなる、暴言、悪口や嫌味、無視、物に当たるなどの行為。モラル・ハラスメント(モラハラ)は、精神的暴力の一種です。
  3. 性的暴力
    性行為の強要、中絶の強要、避妊に協力しない、無理やりアダルトビデオを見せるなどの行為。
    結婚をすると、「望まない性交渉も相手の求めに応じなければならない、拒否できない」と考えられがちですが、性的自由・性的自己決定権は、結婚したからといって失うものではありません。夫婦であっても、暴行・強迫を伴う性的行為の強要や婚姻関係が破綻した後の性交渉の強要は許されず、強制性交等罪(刑法第177条)として処罰されることがあります。
  4. 経済的暴力
    生活費を渡さない、自分の収入や貯金を勝手に使う、借金の強制、働くことを許さないなどの行為。
    法律上、夫婦は互いに協力し、扶助する義務があり、婚姻費用を分担するよう定められています。婚姻費用としての生活費を渡さないことは、「悪意の遺棄」として、法定の離婚原因になる場合もあります。
  5. 社会的暴力
    実家・友人など人との関わりを制限する、携帯やパソコンを取り上げる、外出を制限するなど、相手を社会から隔離・孤立させようとする行為。
    モラハラもこれに該当する場合があります。

(関連記事:夫のモラハラに耐えられない。慰謝料や離婚後の親権はどうなるの?)

DVのサイクル

前述した多くのDVには、次のようなサイクル(周期)があると言われています。

これを繰り返すことでサイクルの速度が加速していき、「加害者=支配者」、「被害者=被支配者」の関係がより強固になると言われています。そして、その被害は長期にわたり、心身に深刻な影響を及ぼします。

 

またDVは、子どもへの影響も極めて大きいと言えます。子どもにとって家庭とは、本来、安全で安心できる場所であるはずです。

しかし、DVのある環境で育つ子どもに対しては、行動、情緒、発達、適応など、さまざまな面で深刻な影響を及ぼし、攻撃性や不安・抑うつ状態が見られる割合が高いという調査もあります。

そのため、DV防止法では子どもの目の前で起こるDVを、「子どもへの心理的虐待」として位置づけています。

 

DV被害にあってしまったら

繰り返しになりますが、DVは、被害者本人にとっても、子どもにとっても、重大な人権侵害です。長期化することで被害が大きくなる傾向にあり、最悪の場合、命を落としてしまうケースもあります。

被害を受けてしまったときに、「自分さえ耐えれば何とかなる」、「自分が悪い」、「子どもがいるから我慢する」などとは、決して思わないでください。DV被害者は加害者に精神的に支配されており、被害を受けている自覚に乏しく、自分が悪いと思いがちなのです。

 

先ほど挙げた例は、DVとなりえる行為の一例にすぎません。

相手といると緊張しておびえてしまうなど、何かおかしいと思うことがあれば、まずは下記のような身近な窓口に相談してください。

状況に応じて、相談・カウンセリングのほか、DV防止法に基づいた一時保護、自立支援、保護命令の申立を行い、加害者のつきまといを防止するなどの対応を取ってくれる場合があります。

●配偶者暴力相談支援センター

各都道府県が設置する婦人相談所、福祉事務所等にて、相談・カウンセリング・一時保護などに対応してくれます。

●DV相談ナビ

全国共通電話番号「♯8008(はれれば)」から、最寄りの相談窓口に電話を自動転送してくれます。

●DV相談+(プラス)

全国どこからでも相談することができます。一部外国語による相談にも対応しています。

●最寄りの警察署

各都道府県警察または各警察署に、被害相談窓口が設置されています。

緊急を要する場合は、110番をするか、警察へ逃げ込みましょう。

また、緊急を要しない場合は、全国共通電話番号「♯9110」から電話相談することも可能です。

●弁護士

もちろん弁護士も相談窓口のひとつです。
弁護士が代理人として法的手続を行うので、DVの加害者である夫と直接関わる必要はありません。

DVに当てはまるかどうかの法的判断から、速やかな別居、保護命令の申立、離婚・損害賠償請求などを含め、それぞれのご事情やご希望に応じた一連の法的サポートを受けることができます。

 

DVを理由に離婚するには?

ケースバイケースの判断になりますが、DVは十分離婚事由となりえるものです。

実際に、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして、裁判所で離婚が認められた事案は多数あります。

 

DV事案では、身の安全の確保が最優先です。

早急に別居をして安全を確保したのちに、離婚請求をしていくべきです。

危険性が低い場合には、親族や知人の家に避難することもできます。

しかし、避難することで夫が逆上する恐れがあるなど、生命身体への危険性が高い場合は、相手の知らない遠く離れた場所への避難が不可欠です。

その場合は、警察や専門家に相談して一時的にシェルターへの避難を検討しましょう。

 

そして、別居によって夫との物理的距離が保てたとしても、暴力を用いて意のままに支配しようとする相手が簡単に離婚に応じるはずもなく、また、被害者が自分の意思を率直に述べることも難しく、夫婦間で話し合っての協議離婚はかなり難しいのが一般的です。

話し合いがまとまらず、最終的には離婚裁判になることも視野に入れておくべきでしょう。

夫婦間の暴力は、たとえ一度であっても許されるものではないですが、裁判所での離婚手続上、一度のDVや軽度のDVではなく、「婚姻を継続し難い重大な事由」と評価しうるほどの悪質なものでなければ、離婚は認められません。

そして、そのようなDVがあったことを、離婚を請求する被害者側が証明しなければならないのです。

 

そのため、証拠集めはとても大切です。

ケガの写真や動画を残す、医療機関を受診する(カルテが証拠になる場合があります)、診断書の取得、SNS・手紙・メールなどによる暴言はそのまま、もしくは写真・動画にして残す、相手とのやり取りを日記やメモ・録音に残すなど、状況に応じて証拠を確保しておきます。

 

もし、DVを理由とする離婚が難しい場合は、相応の別居期間(平均5年程度~)を経ての離婚請求により離婚を認めてもらうなど、ほかの手を検討する必要があります。

いずれにせよ、DVの状況、相手の性格、お子さんの状況、経済的事情など、それぞれの状況に合わせた対応が必要不可欠ですので、弁護士など法律の専門家へのご相談をおすすめします。
(関連記事:離婚時の財産分与って、どうやって決めるの?)

■まとめ

浮気(不貞)の慰謝料請求は、慰謝料請求の中でも最も感情面が先行する性質があるといえると思います。

被害を受けて一刻も早く逃げたいと思いながらも、今の環境を変えて一人でやっていけるのか、大きな不安を抱えていらっしゃるかもしれません。

昨今では、コロナの影響によるDVや虐待の深刻化が危惧されており、国や自治体の相談体制を強化するとともに、一時保護から生活再建の支援まで、さまざまな制度・支援策が用意されています。

家庭裁判所でも一定程度、配慮してくれる仕組みもあります。

あなた自身のためにも、お子さんのためにも、どんなに小さなことであれ「DVかもしれない」と思ったら、まずは一度ご相談ください。

アディーレ法律事務所 弁護士 正木裕美
https://www.adire.jp/profile/masaki_hiromi/

 

関連動画

#34 保存版!!離婚の教科書①
#35 保存版!!離婚の教科書②
#36 保存版!!離婚の教科書③

 

日本シングルマザー支援協会より

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