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はじめに

厚生労働省と日本年金機構が、毎年11月を「ねんきん月間」、11月30日を「年金の日」と定め、公的年金制度の普及・啓発活動を実施しているのをご存知ですか?

老後の生活において重要な「年金」ですが、「制度が複雑でよくわからない…。」という方も多いと思います。

 

今回は、年金に関する制度のひとつである、「年金分割制度」についてご紹介したいと思います。

この制度は、“離婚後の女性の年金水準が低くなりがちである”という問題を解消するために設けられた制度です。

自分の権利をしっかりと行使できるよう、基本的なことから押さえていきましょう。

 

「年金分割制度」とは?

「年金分割制度」とは、離婚時もしくは離婚後に、夫婦の一方の年金保険料納付実績(標準報酬)の一部を分割し、それをもう片方の納付実績として扱うことができるという制度です。

 

婚姻生活中、家事や育児を主に担当していた方は、外で働くもう片方の配偶者よりも、年金保険料納付実績が少なくなりがちです。

そのため、離婚後の女性が受け取れる年金が少なくなってしまい、経済的に困窮してしまうケースが多いのが実態です。

そのような状況を踏まえ、女性が受け取れる年金額を増やすために、平成19年4月1日から本制度が開始されました。

厚生労働省が発表したデータによると、平成30年度には、離婚件数21万2,871件のうち、2万8,793件(約13.5%)で年金分割制度が利用されており、その割合は年々増加傾向にあります。

1. 年金分割の種類は2つ。自分はどちらを使えるの?

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。最も大きな違いは、配偶者と割合の取り決めをしているかどうかです。

「合意分割」では、(1)年金分割をすることと、(2)按分割合の取り決めがあれば、その取り決めのとおりに分割することができます。

取り決めと言っても、必ずしも相手から合意を取りつける必要があるわけではなく、裁判所に決めてもらう方法もあります。

 

取り決めがなくても、強制的に2分の1の分割が受けられる制度があります。

これが、「3号分割」です。

この制度を使えば、自身が国民年金の「第3号被保険者(※1)」であった期間中の配偶者の厚生年金記録について、按分割合の取り決めをすることなく、当然に2分の1の割合で分割を受けることができます。

ただし、平成20年4月1日以降の婚姻期間しか3号分割の対象になりませんので、これより前に婚姻期間がある場合は、合意分割を利用することになります。

 

なお、この2種類は、片方だけしか使えないというわけではなく、併用することも可能です。

合意分割の請求をした場合であっても、婚姻期間中に3号分割の対象となる部分が含まれていれば、3号分割も併せて請求したという扱いになります。

※1 厚生年金、共済組合に加入している第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の方のこと。

2. 年金分割制度は利用した方がいい?

年金分割は、片方の標準報酬月額(※2)のうちの何割かをそのまま自分に割り当ててもらうというものではなく、夫婦の合計収入を前提にその配分を変えるという制度ですので、収入がまったく同じ場合は、請求したとしても、分割を受けられる部分はないということになります。

そのため、配偶者のほうが収入が多い場合は、年金分割をしたほうがよく、逆にご自身のほうが収入が多い場合は、分割を受けられる部分がない可能性がありますので、年金分割をする必要はないと言えます。

ただし、収入に変動があり、時期によっては収入が逆転していたなどの事情がある場合は、一概にそうとは言えませんので、年金分割のメリットの有無を詳細に検討するのがよいと思います。

 

※2 厚生年金保険料や健康保険料を算出するための基準のこと。1ヵ月の給与額(報酬月額)を区切りのよい幅で区分したもので、厚生年金保険の場合は1〜32等級に分かれている。

 

年金分割した場合に増える年金額は?

年金分割によって増加する年金額は、分割をする配偶者の収入水準によるため、個々の収入に左右されることになります。

相手の収入のほうが一貫して高い場合、分割を受けられる期間が長ければ長いほど、受け取れる金額も大きくなりますので、平成20年4月1日以前も婚姻期間がある方は、3号分割だけでなく、合意分割も併せて請求した方がよいでしょう。

また、按分割合は、最大2分の1ですので、そうなるように取り決めをしたいところです。

1. もらえる年金額を事前に知ることはできる?

年金分割制度を利用する場合、通常はまず、最寄りの年金事務所(請求者の住所地を管轄する年金事務所)などから、「年金分割のための情報通知書」を取り寄せることになります。

 

その際、ご自身が50歳以上の場合、もしくは障害年金の受給権者である場合には、希望すれば(1)年金分割を行わない場合、(2)按分割合を2分の1とした場合、あるいは申請者の指定した別の割合とした場合の年金見込み額を知ることが可能です(請求書の中に、希望の有無を記載する欄がありますので、忘れずに記載をしましょう)。

2. 平均的にはどのくらい年金額が増えるの?

厚生労働省が発表した平成30年のデータによると、合意分割をした場合は約3万円(3号分割にかかる改定額も含む)、3号分割のみをした場合は約3,000~5,000円、平均年金月額がプラスになっています。

(⇒関連記事:離婚時の財産分与って、どうやって決めるの?)

 

年金分割制度を利用するには?

まず、一番重要なのは、制度を利用できるのは離婚した翌日から起算して2年以内という期限があることです。

制度を利用したいと思っている場合は、この期限には十分に気をつけておく必要があります。

それでは、実際に年金分割制度を利用する場合の具体的な流れを見ていきましょう。

(1)「年金分割のための情報通知書」の請求手続き

最寄りの年金事務所等に、情報通知書を請求するための書類を提出します(日本年金機構のホームページからダウンロードできます)。

請求は、離婚後でも婚姻中でも、また、一人でも配偶者と一緒でも可能です。

(2)「年金分割のための情報通知書」を受け取る

二人一緒に請求した場合や離婚している場合は、それぞれに交付されます。

離婚をしていない場合は、請求した人のみに交付されます。

(3)按分割合の取り決め

●話し合いによる合意
「年金分割の請求をすること」「分割する場合の按分割合」を合意することが必要です。

●家庭裁判所への審判または調停の申立て
話し合いで合意ができない場合は、審判や調停の申立てを行い、裁判所の手続きの中で決めていくことになります。

(4)年金分割の請求手続き

年金事務所に対し、請求をします(「標準報酬改定請求書」等を提出)。合意請求を行う場合は、合意書や公正証書謄本、調停調書等、割合を決めた際の書面を併せて提出することになります。

請求は、離婚した後でないとできません。

また、離婚の日の翌日から2年以内という期限があり、情報通知書の手続きだけでは請求したことにはなりませんのでご注意ください。

なお、按分割合を定めるために裁判所の手続きを申立てていた場合は、当該手続き終了後(確定後)6ヵ月以内であれば請求することができます。

(5)「標準報酬改定通知書」の受け取り

按分割合に基づき、改定された標準報酬の通知がされます。

 

こんな時は年金分割できる?

「老後の生活が心配だけど、年金の話し合いをせずに離婚してしまった」、「お互いに年金受給中だが、今からでも離婚したい」など、さまざまな状況の方がいらっしゃるかと思います。

下記のようなケースでも年金分割制度を利用できるかどうか、考えてみましょう。

A.すでに離婚している

離婚した翌日から2年以内であれば、分割請求の手続きができます。

すでに離婚している場合、期限を過ぎてしまわないよう、早めに手続きを行う必要があります。

B.年金を受給している

すでに受給中であっても、年金分割請求ができます。

ただし、過去にさかのぼって年金が多くなるわけではなく、請求した翌月の分から多くなるという仕組みです。

具体的には、「年金分割請求があった日の属する月の翌月」から、改定された支給額になります。

C.(元)配偶者が年金分割に応じてくれない

応じてくれないからといって、あきらめる必要はありません。この場合は、3号分割だけを請求するか、裁判所に申立てを行って、分割割合を決めてもらったうえで合意分割をすることになります。3号分割だけでは大きな増額とならないことが多いため、合意分割の利用をおすすめします。

D.事実婚関係にある

事実婚(内縁関係)であっても、年金分割をすることは可能です。

ただし、合意分割であっても、3号分割であっても、分割の対象となるのは、分割を受ける方が「第3号被保険者」として認定されている期間についてのみです。

 

まとめ

年金分割の話し合いは、相手が分割の割合について納得せず、話し合いが難航することも多いと思います。

しかし、年金分割は、裁判所の手続きや3号分割制度を使うことで、相手の同意がなくても進められる制度です。

また、財産分与などと比べて、相手の情報を得ることが容易にできるよう制度設計がされています。

老後の暮らしを守るためにも、制度の仕組みを理解し、ご不安な場合は弁護士に相談するなどして、自分の権利をしっかりと守ることができるように行動しましょう。

 

最後に、お話は変わりますが、12月と言えば年末調整の時期ですね。シングルマザーの方は、「ひとり親控除」や「寡婦(寡夫)控除」が適用されることで、いくらか税金が還付される可能性があります。

「ひとり親控除」は、従前からあった「寡婦(寡夫)控除」の対象を未婚の親にも拡大するもので、令和2年から始まった制度です。

所得が500万円以下のひとり親であれば、対象になる可能性があります(その場合、35万円の所得控除が受けられます)。

知らずに損をするということがないよう、早めに調べてみるのがおすすめです。

アディーレ法律事務所 弁護士 冨田梨紗
https://www.adire.jp/profile/tomita_risa/

 

関連動画

#34 保存版!!離婚の教科書①
#35 保存版!!離婚の教科書②
#36 保存版!!離婚の教科書③

 

日本シングルマザー支援協会より

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