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■「コロナ離婚」とは?
新型コロナウイルス(以下、「コロナ」といいます)の影響により、ライフスタイルが大きく変わった方も多いと思います。
日常の変化により、これまでどうにかやり過ごせてきた不満が顕在化したり、新たなストレスが増えたりしたことで、離婚を考え始めた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
たとえば、離婚を考え始めた原因として、以下に当てはまる項目はありませんか?
- 夫が在宅勤務となり一日中家にいるのに、家事や育児に協力してくれない
- コロナの感染予防や外出自粛について、危機感や考え方に違いがあり、今後一緒にやっていけるか不安
- 夫婦で同じ空間にいる時間が多くなり、ストレスからかDVやモラハラを受けるようになった など
今月は、コロナをきっかけに離婚を考える、いわゆる「コロナ離婚」について、離婚を考え始めた方、離婚を決意した方それぞれに向けて、「いま準備すべきこと・考えておくべきこと」をお話します。
■離婚を考え始めた方
(1)できるならギクシャクした関係を改善したい・・・と思っている方
関係改善のため、まずは夫婦で話し合ったり、親族や知人に仲裁してもらったりを考える方が多いと思います。
ただ、それが難しかったり、個人的なことをあまり周りの人には知られたくない・・・という場合には、弁護士に相談することも選択肢に加えてみてください。
もしかしたら、皆さんのなかに「弁護士は、離婚を決めている人が相談するもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、実際の弁護士業務はそれだけではありません。
裁判所の手続きに、夫婦関係を円満にするための調停があります。
離婚も視野に入れつつも、修復可能か、どのような取り決めをすれば円満にやっていけるかなど、客観的な視点から弁護士がアドバイスをしながら関係修復を考えていくのです。
(2)離婚したい気持ちはやまやまだけど、その後の生活が不安・・・・という方
経済的な不安から離婚を躊躇する方は、とても多いと思います。
この不安を解消するには、今後の収入や支出についての具体的なイメージを持つことが大切です。
① 母子家庭の現状について
実際のところ、母子世帯の収入状況は厳しいことも多いのが現実です。
平成27年のデータではありますが、母子世帯の収入は、母親自身の就労所得で見ると、平均200万円(1か月あたりおよそ16.7万円)となっており、経済的に苦しい状況となっていることがうかがえます。
少しでも安定した生活を確保するために、かかるお金、もらえるお金を一つ一つ事前に考えておきたいところです。
(参照:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 16ひとり親世帯の平成27年の年間収入」厚生労働省ホームページより)
②そもそも、生活するには最低いくら必要?
一般的に、生活していく上で必要となる費目は、以下のようなものがあります。
・家賃
・水道光熱費
・携帯代
・食費
・日用品
・医療費
・保険料
・税金 など
実際にいくらかかるかは、個人の状況によりますが、最低でも1か月あたり15~20万円程度は必要になると思います。
③自分の収入以外に、何か公的な手当等はあるの?
離婚後の収入源としては、自身の就労による収入以外に、公的手当等、養育費、親族等からの援助などが考えられます。
まずは、確実なところとして、公的な手当を確認しておきましょう。
なお、養育費については、次の項目の中でお伝えしますが、残念ながら、確実に受け取れるとは限らないのが現状なので、その点も踏まえて見通しを立てる必要があります。
・児童手当
こちらは、ひとり親世帯かそうでないかにかかわらず、子どもが中学校を卒業するまで受け取れます。
金額は、年齢や子どもの人数によって変わりますが、子ども一人当たり、10,000円か15, 000円です(所得制限世帯を除く)。
児童手当は、お子さんがいれば現在も支給を受けていると思いますが、配偶者の名義で手当てを受け取っている場合は、自身の名義に切り替える手続きが必要となります。
(参照:「児童手当Q&A」内閣府ホームページより)
・児童扶養手当
こちらは、ひとり親世帯の場合に、子どもが高校を卒業するまで受け取れます。
金額は、子どもの人数と親の収入によって変わりますが、1人目は10,180円~43,160円が支給され、2人目については5,100円~10,190円の加算、3人目については3,060円~6,110円の加算がされる仕組みとなっています。
(参照:「児童扶養手当について」厚生労働省ホームページより)
※なお、コロナに関する政策の一つとして、主に児童扶養手当受給者を対象として、ひとり親世帯臨時特別定額給付金が支給されることになっています。
(参照:「ひとり親世帯臨時特別給付金」厚生労働省ホームページより)
■離婚を決意した方
(1)そもそも、離婚できるの?
離婚は、相手も同意すれば、理由は何であれ離婚できますが、相手が同意しない場合は、法律上の要件を満たしていることが必要となります。
(関連記事:性格の不一致を理由に、離婚できるの?)
(2)離婚に向けて
離婚を決意したら、離婚前に準備すべきことがいくつかあります。
以下のことは、必ず考えておいて欲しいと思います。
そして、一部であっても合意ができたら、公正証書で取り決めておくことをおすすめします(公正証書で取り決めておくと、約束が守られなかった場合に、約束の内容を裁判で証明する手間が省け、初めから強制執行に取り掛かれます)。
① 子どもに関すること
・親権
親権をどちらが持つのか、これは、離婚する前に必ず決めておくことになります。
また、一緒に住まない親には、面会交流を求める権利がありますので、親権を自分が持つ場合も、子どもと離婚した夫を定期的に会わせることを考えていくことになります(なお、実施の有無や具体的な態様については子の福祉の観点から決まりますので、必ず会わせることになるとは限りません)。
・養育費
養育費は、離婚届を出した後に決めてもいいものですが、できれば事前に決まっていた方が、今後の生活設計を立てやすいです。
養育費は、「ご自身と夫のそれぞれの離婚後の収入」、「子どもの人数・年齢」でだいたいの金額が決まります。
目安となる金額を裁判所がホームページで公開していますので、事前に目安を確認した上で、お話をされることをおすすめします。
(参照:「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」裁判所司法統計より)
また、コロナの影響で今後、自分の収入や相手の収入が大きく変わる可能性があることにも注意が必要です。もし今後、収入の変動等があり、前提となっていた事情が変わることがあれば、養育費増額(逆に、減額を求められることもあります)の調停等を行うことで、金額を変更することが可能です。
また、厚生労働省の調査では、「現在も養育費を受けている人」は、母子世帯全体の約4分の1程度であるのが現状であり、きちんと支払われないことも多いので、しっかりと取り決めをしておくこと、払われなかった場合にどうするかというところまで見据えて考えておくことが大切です。
(参照:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 17養育費の状況」厚生労働省ホームページより)
養育費の未払い問題を解決するために、強制執行法が改正され(令和2年4月1日から施行)、従前よりは養育費をきちんと払ってもらいやすくなっています。
(関連記事:養育費の未払いが解消されるかも?!改正された民事執行法について知ろう!)
②配偶者から受け取るお金に関すること
・婚姻費用について
離婚までの婚姻費用については、夫婦で分担することになっていますので、別居していても、生活費の請求ができる場合があります。養育費と同様に、裁判所が目安となる金額を示しています。
(参照:「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」裁判所司法統計より)
・財産分与、年金分割、慰謝料
婚姻中に形成した財産は、原則として、半分ずつに分けることになります。分けるまでの間に財産隠しをされてしまったりする可能性もあるので、離婚前に、どのような財産があるか、リストを作っておくとよいと思います。
また、年金分割という制度により、片方の配偶者の収入(標準報酬)のうちの一部を、自身の収入(標準報酬)として組み換えを行うことで、将来の年金額を増やす方法もあります。
さらに、不貞行為やDV等があった場合、慰謝料が請求できることがあります。離婚前に、集められる証拠は集めておくようにしましょう。
(関連記事:離婚を決意したらしておくべきこと)
■ご不安なことがあれば、弁護士に相談を
コロナ離婚に限らず、今後の人生の選択に不安を抱えているのは、あなただけではありません。離婚する・しないにかかわらず、ひとりで決断する前にまずは弁護士にご相談ください。あなたに合った解決方法を、一緒に考えていきましょう。
アディーレ法律事務所 弁護士 冨田 梨紗
https://www.adire.jp/profile/tomita_risa/
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日本シングルマザー支援協会より
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